就労の”やりがい”が孤立リスクを下げる。金銭的動機のみで働く高齢者は、孤立するリスクが高い!(東京都健康長寿医療センター)
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所の 村山 洋史 氏らの報告。2025年10月27日 同センターホームページにて公表。研究成果は、2025年10月15日に「JMA Journal」に掲載。
東京都大田区在住の65歳以上の高齢者が対象。2015年8月(ベースライン)と2018年1月(2.5年間追跡時)の2時点でアンケート調査を実施。社会的孤立を「対面または非対面での交流が週1回未満であること」と定義して、ベースライン時に社会的孤立していなかった1,556人(男性:38.2%、平均年齢:72.9歳)のデータを使用。就労状況は、有給労働の有無に分類。就労動機は「経済的理由のみ」、「非経済的理由のみ(健康、生きがい、社会貢献、社会とのつながりなど)」、「経済的理由と非経済的理由の両方」に分類。就労状況と動機の違いによる社会的孤立の発生との関係を分析。
結果の概要
・ ベースライン時点で就業していたのは36.1%。フォローアップ時点で社会的孤立状態にあったのは20.1%。
・ 就労をしている/していないでは、将来の孤立の発生リスクに違いはなかった。
・ 就労している者を就労動機による3群と「就労なし」の4群間での比較では、「就労なし」に比べ、「金銭的動機のみ」の2.5年後の孤立の発生リスクは1.90倍(95%信頼区間: 1.15-3.14)。(下図左参照)

・ 「就労あり」に限定し、就労動機による孤立発生の違いを見たところ、「非金銭的動機のみ」で働く者に比べ、「金銭的動機のみ」で働く者の孤立の発生リスクは3.65倍(95%信頼区間: 1.75-7.61)。(上図右参照)
・ 「金銭的・非金銭的動機の両方」で働く者は、「非金銭的動機のみ」と「金銭的動機のみ」の中間程度のリスクであることから、「非金銭的動機」は孤立の発生を抑制する方向に、逆に「金銭的動機」は発生を助長する方向に働くことが伺える。(上図参照)
報告は、「職場にとっては、やりがい・役割感など"非金銭的動機"を感じられる職場づくりが、孤立防止に役立つ可能性を示している」とまとめている。
「高齢者の孤立を防ぐカギは「働く理由」 就労の"やりがい"が孤立リスクを下げる可能性:2.5年の追跡研究」(東京都健康長寿医療センター)
https://www.tmghig.jp/research/release/2025/1027.html
「Effects of Employment Status and Motivations on the Onset of Social Isolation in Old Age: A 2.5-year Longitudinal Study」(JMA Journal)
https://www.jmaj.jp/detail.php?id=10.31662%2Fjmaj.2025-0006