運動にあまり関心がなくても1日30分以上歩いている高齢者と関連があったのは、「週1回以上友人に会う」、「スポーツ観戦あり」、「趣味が読書」など(帝京大学大学院 他)

 帝京大学大学院 金森 悟 氏らの報告。2022年11月15日「第69巻 日本公衛誌 第11号」にて公表。

 2019年度に日本老年学的評価研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)が24都道府県62市町村在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者に行った郵送法調査結果より分析に必要な項目に欠損がある者、介護・介助が必要な者を除いた18,464名が対象。

 調査項目は1日の歩行時間、運動(1回20分以上で週1回以上)への関心度(変容ステージ)、身体活動の関連要因(人口統計・生物学的要因8項目、心理・認知・情緒的要因3項目、行動要因8項目、社会文化的要因40項目、環境要因3項目。分析は運動への関心度で「前熟考期」(定期的な運動は実施しておらず関心が低い層)、「熟考期・準備期」(定期的な運動は実施していないものの関心はある層)、「実行期・維持期」(定期的な運動をしている層)の3群、目的変数を1日30分以上の歩行の有無、説明変数を身体活動の関連要因、調整変数を人口統計・生物学的要因全8項目として分析。

結果

 定期的に運動・スポーツを実施していない群(「前熟考期」のみ、または「前熟考期」と「熟考期・準備期」のみ)と関連がみられた項目は、人口統計・生物学的要因3項目(配偶者あり、負の関連では年齢80歳以上、および手段的日常生活動作非自立)、行動要因2項目(外出頻度週1回以上、テレビやインターネットでのスポーツ観戦あり)、社会文化的要因6項目(手段的サポートの提供あり、友人と会う頻度が週1回以上、町内会参加、互酬性高い、趣味が読書、負の関連では趣味が囲碁、将棋、麻雀)。(上表参照)
 一方、歩行との関連がみられなかった項目の中には、身体活動を促す働きかけに関する項目(体を動かすことで経済的な恩恵のある制度の利用、運動・スポーツを勧められた経験、運動・スポーツのグループやイベント参加へのきっかけを紹介された経験)。

 報告は、「運動行動の変容ステージの低い層でも1日30分以上の歩行を促すには、身体活動を前面に出さず、人とのつながりなどを促進することが有用である可能性が示された」とまとめている。


「高齢者における運動行動の変容ステージ別の歩行時間の関連要因:JAGES2019横断研究」(PDFファイル)
 https://www.jsph.jp/docs/magazine/2022/11/11-p861.pdf