連続した「タ」の発音回数が少ないとフレイルリスクが高い!(岡山大学大学院)

 岡山大学大学院予防歯科学分野講師 竹内 倫子 氏らの報告。2022年1月20日「Int J Environ Res Public Health」に記載。

 同大学病院予防歯科部門を2017年11月〜21年1月に受診した60歳以上の患者で、質問内容が理解でき、自立歩行が可能で定期的に受診していることなどを満たした97人(平均年齢71.9歳、男性34例、平均残存歯数20.8本、平均機能歯数26.4本)が対象。追跡期間は2年。

 舌背部の細菌数、口腔水分、舌圧、咬合力、咀嚼能力、嚥下機能、オーラルディアドコキネシス(ODK)などを評価。ODKは、「パ(唇の運動機能)」「タ(舌の前方の運動機能)」「カ(舌の後方の運動機能)」をそれぞれ5秒間発音してもらい、1秒当たりの平均回数を測定。2年後に、国立長寿医療研究センターの日本語版フレイル基準によりフレイルを判定。

 結果

 2年後にフレイルと判定された患者は97例中34例。

 健康な患者を「対照群」(63例)とし「フレイル群」(34例)と比較したところ、ODKの「タ」の1秒当たりの平均回数は対照群の6.3回±0.7に対してフレイル群では5.9回±0.7、同様に「カ」は5.9回±0.8に対して5.5回±0.9でいずれも有意に少なかった。「パ」は6.2回±0.7に対して5.8±0.8で両群で有意差はなかった。(上図左)
 さらに、ロジスティック回帰モデルを用いて、口腔環境とフレイルとの関連を検討。結果、ODKのベースラインの「タ」の平均回数とフレイルとの有意な関連が示された(オッズ比1.85、95%CI 1.02〜3.35、P=0.044)。(上図右)

 報告は「60歳以上では、ODKの『タ』の平均回数が少ないことが2年後のフレイルの予測因子になる可能性が示された」とまとめている。


「Oral Factors as Predictors of Frailty in Community-Dwelling Older People: A Prospective Cohort Study」
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8834726/


〔参考〕
 オーラルジアドコキネシス(ODK:oral diadochokinesis)
 5秒間または10秒間で「パ」、「タ」、「カ」のそれぞれの音節を、なるべく早くハッキリと繰り返し構音させて、1秒当たりの発音回数を計測する構音検査法。口腔内の状態や、慣れ、測定環境、患者の理解度などによって、値が容易に変化する。そのため、事前に十分に検査の意味と方法を説明し、できるだけ早く・ハッキリ構音させ、測定前に十分に練習させてから行う。2019年(平成31年)1月現在の時点では、いずれかの音節の値が6回/秒未満で、舌口唇運動機能低下に該当ありと判断。(日本歯科医師会)

「通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル ~高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けて~《2020年版》Part 6」(日本歯科医師会)(PDFファイル)
 https://www.jda.or.jp/oral_flail/2020/pdf/2020-manual-06.pdf
(サイト内リンク)「タ」、「カ」を早く発音できると(=舌がよく動く)と栄養状態が良好で、フレイルのリスクが低い(岡山大学病院 他)
 https://healthy-life21.com/2021/10/31/20211031/
(サイト内リンク)(解説)新生活習慣!お口の筋機能トレーニング、食前の「パタカラ体操」のご紹介(healthy-life21.com)
 https://healthy-life21.com/2018/03/01/20180301/