「タ」、「カ」を早く発音できると(=舌がよく動く)と栄養状態が良好で、フレイルのリスクが低い(岡山大学病院 他)

 国立大学法人岡山大学病院の澤田ななみ氏らの研究グループがオーラルフレイル、栄養状態、フレイルの関係を調査した研究結果。2021年10月2日イギリスの学術雑誌「Gerodontology」にオンライン掲載。

 2017年11月から2019年1月に岡山大学病院の予防歯科クリニックを訪れた患者203人の患者(63人の男性と140人の女性、年齢は60歳から93歳)が対象。

 歯の数、歯周状態および口腔機能を記録した。舌背、口腔湿潤性、舌圧、舌および唇の運動機能(オーラルジアドコキネシス(ODK:oral diadochokinesis))、咀嚼能力、咬合力および嚥下機能における細菌数を測定。栄養状態、身体的虚弱状態なども評価。

結果

 1秒当たりに発音できる「タ」、「カ」の回数が多い(=舌がよく動く)と栄養状態が良好で、フレイル(注)が少ないことがわかった。また、年齢が高いほど舌が動きにくく、栄養状態が悪く、フレイルが多いこともわかった。(上図モデル参照)

 報告は「年齢、オーラルジアドコキネシス、栄養状態および虚弱の間の関連に基づいて、舌運動機能を維持することは、高齢者の良好な栄養状態および身体状態に寄与する可能性がある」とまとめている。

(注)フレイル
 高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念(日本老年医学会、2014)。


「舌がよく動く人は栄養状態が良好で身体が元気!」(岡山大学)(PDFファイル)
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20211026-2.pdf
「Oral function, nutritional status and physical status in Japanese independent older adults」
 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/ger.12593


〔参考〕

 オーラルジアドコキネシス(ODK:oral diadochokinesis)
 5秒間または10秒間で「パ」、「タ」、「カ」のそれぞれの音節を、なるべく早くハッキリと繰り返し構音させて、1秒当たりの発音回数を計測する構音検査法。口腔内の状態や、慣れ、測定環境、患者の理解度などによって、値が容易に変化する。そのため、事前に十分に検査の意味と方法を説明し、できるだけ早く・ハッキリ構音させ、測定前に十分に練習させてから行う。2019年(平成31年)1月現在の時点では、いずれかの音節の値が6回/秒未満で、舌口唇運動機能低下に該当ありと判断。(日本歯科医師会)

「通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル ~高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けて~《2020年版》Part 6」(日本歯科医師会)(PDFファイル)
 https://www.jda.or.jp/oral_flail/2020/pdf/2020-manual-06.pdf

(サイト内リンク)(解説)新生活習慣!お口の筋機能トレーニング、食前の「パタカラ体操」のご紹介(healthy-life21.com)
 https://healthy-life21.com/2018/03/01/20180301/