早稲田大学スポーツ科学学術院の 渡邉 大輝 氏らの報告。2024年1月9日早稲田大学のホームページ等で公表。研究成果は2023年12月25日「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に掲載。
2011年から京都府亀岡市で行われている介護予防の推進と検証を目的とした京都亀岡スタディ参加で2013年4月1日から11月15日まで三軸加速度計を装着した65歳以上の4,159人(平均年齢72.3歳)が対象。エネルギー摂取量は妥当性を確認した食物摂取頻度調査法を用いて評価。歩数と摂取エネルギー量の関係を分析。
対象者を、「低エネルギー摂取量×歩数が少ない(エネルギー摂取量:男性:<2,400kcal/日; 女性:<1,900kcal/日; 歩数:<5,000歩/日,n=1,352)」群、「高エネルギー摂取量×歩数が少ない(エネルギー摂取量:男性:≥2,400kcal/日;女性:≥1,900kcal/日;歩数:<5,000歩/日,n=1,586)」群、「低エネルギー摂取量×歩数が多い(エネルギー摂取量:男性:<2,400kcal/日;女性:<1,900kcal/日;歩数:≥5,000歩/日,n=471)」群、「高エネルギー摂取量×歩数が多い(エネルギー摂取量:男性:≥2,400kcal/日;女性:≥1,900kcal/日;歩数:≥5,000歩/日,n=750)」群の4グループに分類。死亡率関連データは2016年11月30日まで収集。追跡期間の中央値は3.38年(14,046人年)で、111人の死亡が記録された。
結果のポイント
・ 1日当たりの歩数が4,000歩未満の者が歩数を増やすことでエネルギー摂取量が増加するが、4,000歩以上の者が歩数を増やしてもエネルギー摂取量の増加効果は見られなかった。この結果は、歩数が約4,000歩未満の高齢者では食欲不振による必要なエネルギーおよび栄養素の不足を回避するために、歩数を含む身体活動量の改善が有効である可能性を示唆。
・ 「高エネルギー摂取量×歩数が多い」群が最も死亡リスクが低かった。この結果は、高齢者の「たくさん食べて、身体をたくさん動かす」ことの重要性を示唆。(上図参照)
しかし、死亡リスクに対する歩数とエネルギー摂取量の相互作用効果は見られなかった。
・ 高齢者の死亡リスクが最も低くなる最適なエネルギー摂取量は、歩数100歩あたりのエネルギー摂取量が35~42kcal/日(6,000歩の場合2,100~2,520kcal/日)。一方で、歩数100歩当たりの補正エネルギー摂取量が28kcal/日未満および56kcal/日以上の者は死亡リスクと関連しなかった。これらのことから、高齢者においては身体を動かさないで食べることや身体を動かして食べないことは死亡リスクに有益な効果を示さないため、身体活動量に応じたエネルギー摂取量が高齢者の寿命を延長させるために重要な可能性を示唆。
報告は、「単に体を動かせば良いというだけでなく、歩数に見合った食事による適切なエネルギー摂取量があり、高齢者の場合、歩数100歩あたり35~42kcal/日がその目安であることを示した」とまとめている。
「高齢者に最適なエネルギー摂取量は?」(早稲田大学)
https://www.waseda.jp/inst/research/news/76031
「Association between doubly labelled water-calibrated energy intake and objectively measured physical activity with mortality risk in older adults」(International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity)
https://ijbnpa.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12966-023-01550-x