高齢者の安静時心拍数の上昇は認知症の独立した危険因子

 スウェーデンのカロリンスカ研究所のYume Imahori氏らの報告。2021年12月3日「Alzheimers Dement」に掲載。

 スウェーデンのコホート研究SNAC-K(Swedish National Aging and Care in Kungsholmen)の参加者で60歳以上の認知症のない2,147人(平均年齢70.6歳、女性が62%、86人に心血管疾患の既往歴あり)が対象。2001~2004年から2013~2016年まで追跡調査。

 安静時心拍数は心電図で評価。期間中に289例が認知症と診断され、発症率は1,000人・年当たり14.9例。安静時心拍数は、「60拍/分未満」(674人)、「60~69拍/分」(674人)、「70~79拍/分」(467人)、「80拍/分以上」(230人)の4群に分類。平均は65.7拍/分。認知症はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th Reisionの基準に従って診断。グローバルな認知機能は、MMSE(Mini-Mental State Examination)を用いて評価。データはCoxモデルおよび線形混合効果モデルを用いて解析。

 安静時心拍数が高い群は年齢が高く、教育程度が低く、現喫煙者が多く、身体活動性が低く、高血圧が多かった。心血管疾患の既往歴は4群で有意差はなかったが、安静時心拍数が高い群でβブロッカー使用率が低かった。MMSEスコアは4群で違いはなかった。

 
 「80回/拍以上」群は「60~69拍/分」群と比較すると、認知症発症リスクが55%有意に上昇〔調整ハザード比(aHR)1.55、95%CI 1.06~2.26〕(上図参照)。心血管疾患の既往者と新規発症者を除いても、両者の有意な関係が認められた(同2.13、1.17~3.88)。
 同様に「80拍/分以上」群は「60~69拍/分」群と比較してMMSEスコア低下速度が速かった(調整β係数-0.13、95%CI-0.21~-0.04)。心血管疾患の既往者と新規発症者を除外しても、両者の有意な関係が認められた(同-0.10、-0.19~-0.01)。

 報告は、「高齢者において、安静時心拍数が高いと、認知症のリスクが高まり、心血管疾患とは無関係に認知機能が低下する」とまとめている。


「Association of resting heart rate with cognitive decline and dementia in older adults: A population-based cohort study」
 https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.12495