眼疾患は認知症リスクを高める

 中国・Guangdong Provincial People’s HospitalのXianwen Shang氏らの報告。2021年9月13日に「Br J Ophthalmol」(オンライン版)に掲載。

 UK Biobank(遺伝的素質やさまざまな栄養、生活様式、薬物療法など環境曝露が疾患に対して与える影響を調査するイギリスの長期大規模バイオバンク研究)に登録者で、2006~10年にベースラインの評価をした55~73歳の成人1万2,364人を2021年まで追跡。入院患者記録、死亡診断書、自己申告データを用いて認知症の発症を確認。

 追跡期間126万3,513人・年に全認知症2,304例、アルツハイマー病945例、血管性認知症513例発症。

 ベースラインでの加齢黄斑変性症、白内障、糖尿病関連眼疾患、緑内障に関連した認知症の多変量調整HR(95%CI)は、それぞれ1.26(1.05~1.52)、1.11(1.00~1.24)、1.61(1.30~2.00)、1.07(0.92~1.25)。加齢黄斑変性症、白内障、糖尿病関連眼疾患は認知症と関連。緑内障との関連はなかった。(上図参照)

 ベースライン時の糖尿病、心臓病、脳卒中、うつ病は、いずれも認知症リスクの増加と関連。

 加齢黄斑変性症と全身疾患の組み合わせの中では、加齢黄斑変性症と糖尿病が最も認知症発症リスクと関連(HR(95%CI):2.73(1.79~4.17))。

 白内障と全身疾患を持つ人は、白内障と全身疾患を持たない人に比べて、認知症を発症するリスクが1.19~2.29倍。糖尿病関連眼疾患と全身疾患を持つ人は糖尿病関連眼疾患と全身疾患を持たない人に比べて認知症を発症するリスクが1.50~3.24倍。

 白内障と認知症の関連のうち追跡期間中に発症した糖尿病が寄与した割合は9.2%(95%CI 2.9~5.4%)、高血圧が寄与した割合は7.1%(同2.7~17.0%)、心疾患が寄与した割合は9.1%(同3.3~22.5%)、うつ病が寄与した割合は12.0%(同4.5~28.4%)、脳卒中が寄与した割合は22.4%(同8.0~48.9%)。糖尿病関連眼疾患と認知症の関連のうち、高血圧、脳卒中、心疾患、うつ病と糖尿病が寄与した割合は10.0%(同9.4~31.5%)。

 報告者は「緑内障と認知症には関連はなかったが、加齢黄斑変性、白内障、糖尿病関連眼疾患は認知症リスクを高める。眼疾患と全身疾患の両方を持つ人は、眼疾患または全身疾患の一方だけを持つ人に比べて認知症リスクが高い」とまとめている。


「Associations of ophthalmic and systemic conditions with incident dementia in the UK Biobank」
 https://bjo.bmj.com/content/early/2021/08/19/bjophthalmol-2021-319508