配偶者同士は生活習慣も病気も似る?日本・オランダにおけるバイオバンクを利用した国際共同研究(東北大学)

 東北大学の2021年9月15日プレスリリース。日本・オランダにおけるバイオバンク※を活用した国際共同研究結果(2021.8.25「Atherosclerosis」にオンライン掲載)。
 東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)地域住民コホート研究の5,391の配偶者ペア、オランダLifelinesコホート研究の2万8,265の配偶者ペアが対象。心血管・代謝疾患のリスク因子として喫煙・飲酒・運動などの生活習慣、高血圧・糖尿病・メタボリック症候群の疾病、体重、腹囲、肥満度(Body Mass Index)、血圧、総コレステロール・中性脂肪・HDL-コレステロール・LDL-コレステロールなどの検査値について、配偶者同士の類似性を検討。分析では、配偶者の年齢を考慮した相関分析またはロジスティック回帰分析を使用して評価した結果。

 ToMMoコホートの夫と妻の平均年齢は63.2歳と60.4歳。Lifelinesコホートの夫と妻の平均年齢は50.0歳と47.7歳。

 配偶者同士の類似性は、両コホート調査のすべての心血管・代謝疾患のリスク因子および疾患で確認。
 検査値は、相関係数は0.032から0.263の範囲で、体重や腹囲で相関係数が高い値を示した。(上左表参照)
 生活習慣は、現在喫煙のオッズ比は約5倍、現在飲酒、運動習慣で2倍以上。 (上右表参照)
 疾病は、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームの年齢調整オッズ比は、いずれも約1.5倍。 (上右表参照)

 報告は、今後の展望として、「① 健康診断等で夫婦一緒に保健指導を行う(問題認識の共有) ② 夫婦で励まし合い、競争し合うよう誘導する(日常生活における健康管理)といった施策で効果的な生活習慣の変容が期待できる。また、遺伝要因よりも環境要因を共有する夫婦の類似性の結果から、環境要因と疾病の関連をより明確化できる可能性がある」とまとめている。


「配偶者同士は生活も一緒、病気も一緒?」(東北大学)(PDFファイル)
 https://www.megabank.tohoku.ac.jp/cms/wp-content/uploads/2021/09/ID45778_presrelease.pdf
「Spousal similarities in cardiometabolic risk factors: A cross-sectional comparison between Dutch and Japanese data from two large biobank studies」
 https://www.atherosclerosis-journal.com/article/S0021-9150(21)01310-1/ppt

※バイオバンク・・・ 6つの国立高度専門医療研究センター(NC)が「新たな医の創造」に向けて個々の疾患専門性を尊重しつつ、ネットワーク型・連邦型の組織形態で運営する事業。血液や脳脊髄液などの試料を集めて、国内外の大学・製薬会社などの研究者に届ける研究のための基盤。一つ一つの研究ごとに検体を集めるのではなく、試料をバンクに集めたうえで、様々な研究プロジェクトに提供することで、試料を無駄なく、効率的に使用できる。また、試料や情報の集め方を整え、一定にすることで、より質の高い研究を行うことが可能になる。このようなことからバイオバンクは、医学研究全体を効率的・組織的に推進するための鍵になると言われている。(国立精神・神経医療研究センター)


〔管理者コメント〕

 生活習慣は子供への影響も大きい。働き盛りの既婚者の保健指導は、調整などが大変でも夫婦お揃いで行うのが望ましいと感じる。