20年後の日本は、認知症は減少するが健康格差は拡大して影響を受ける層でフレイルを合併する割合が高くなり、介護費は増加すると予測(東京大学大学院 他)

 東京大学大学院医学系研究科の笠島 めぐみ氏、橋本 英樹氏、同大学生産技術研究所、高齢社会総合研究機構、未来ビジョン研究センター、米スタンフォード大学の国際共同研究。2022年5月1日「the Lancet Pubic Health」に掲載。

 研究グループはスタンフォード大学が開発した健康状態変化予測プログラムを改良し、年齢、性、学歴別に13の疾患と機能障害の有病状態を予測するモデルを開発。4,500万人以上の60歳高齢者の健康状態データが2043年までにどう変化するのかを追跡した結果。

・ 2016年から2043年の間に、65歳での平均余命は女性では23.7歳から24.9歳に、男性では18.7歳から19.9歳に増加。(上図左)
・ 認知症に費やされる年数は、女性は4.7年から3.9年に、男性は2.2年から1.4年に減少。(上図中)
・ フレイルの年数は、女性は3.7年から4.0年、男性は1.9年から2.1年に増加。(上図右)
・ 2043年までに、高校教育未満の75歳以上の女性の約29%が認知症とフレイルの両方を患っていると推定。
・ 複雑なケアが必要になり介護費総額は増加(認知症は年間1,250億ドル、フレイルは970億ドル)すると予想。

 報告は、「近い将来、日本人は認知症になる年数が減るかもしれないが、健康格差は拡大して虚弱や認知症の影響を受けやすい集団に偏りを生じる。高齢化を単に社会的負担と考えるのではなく、健康の公平性を高めるための配慮が必要である」とまとめている。


「Projecting prevalence of frailty and dementia and the economic cost of care in Japan from 2016 to 2043: a microsimulation modelling study」 
 https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(22)00044-5/fulltext