高齢化日本一の地域におけるフレイル調査から判明した負のフレイルスパイラル ‐上流には社会的孤立-(東京都健康長寿医療センター研究所)

 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの高齢者健康増進センター原田和昌氏、杉江正光氏らの研究グループの報告。2022年3月11日プレスリリース。報告は「Archives of Gerontology and Geriatrics Volume100」に掲載。

 群馬県甘楽郡南牧村の75歳以上で要介護認定を受けていないの住民268人(81.5±4.5歳)が対象。握力や歩行速度などの身体機能を含む身体的フレイルや高齢期うつ、認知機能、社会的孤立などの評価を実施。それぞれの率と重複、およびそれらの負の相互関係を調査。

 268人の参加者(81.5±4.5歳)のうち、身体的フレイルは48.1%、フレイルは8.6%。軽度の認知障害は68.3%、認知症は13.0%、認知機能障害5.2%。抑うつ気分は25.7%、抑うつは5.2%。社会的フレイルは7.8%。

 解析の結果、南牧村の後期高齢者は身体的フレイルや高齢期うつ、社会的孤立の頻度が、65歳以上の前期・後期高齢者を対象とした他地域での先行研究の発生頻度よりも低く、認知機能の低下に関しても前期・後期高齢者を対象とした他地域での先行研究と同等の発生頻度であった。

 経路分析した結果、身体的フレイルは社会的孤立や高齢期うつから始まり、身体的フレイルが認知機能の低下をもたらすことが判明。 (上図参照)

 報告は、「身体的フレイルは社会的孤立や高齢期うつから始まり、身体的フレイルが認知機能の低下をもたらすという負のスパイラルの存在が地域特性として判明した。 Covid-19のパンデミックやそれに伴うロックダウンは活動自粛に伴う社会的孤立の悪化に拍車をかけ、今後の高齢者におけるうつや身体的フレイル、認知機能の増悪が危惧される」などとまとめてる。


「Prevalence, overlap, and interrelationships of physical, cognitive, psychological, and social frailty among community-dwelling older people in Japan」
 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167494322000401


〔管理者コメント〕

 上記は、高齢者を対象とした報告ですが、「孤立」は老若男女を問わず最も恐ろしい健康阻害要因です。高齢者だけでなく、子供、女性の孤立にも注意が必要!
 コロナ禍における「社会的距離戦略」は“諸刃の剣”です。「三つの密(密閉、密集、密接)」などを必要以上に遵守すると、周りの人との会話やコミュニケーションをとる機会が減り、物理的に人を遠ざけるだけでなく心理的な距離も遠ざけて「孤立」するリスクが高くなります。他者との繋がりを必要とするのは「人間の本質」です。「孤立」は社会的、身体的、精神的に弊害をもたらし、生活習慣病、要介護、認知症などや自殺や犯罪にも負の影響を及ぼすことが報告されています。