「笑い」と生活習慣病との関連 -東日本大震災後の調査-(福島県立医科大学)

 福島県立医科大学医学部疫学講座の江口依里氏らの報告。2021年12月2日「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載。

 東日本大震災後の笑いの頻度と生活習慣病との関連を調査。福島県民健康調査のデータを用い2012年度と2013年度に実施したアンケートに回答した30~89歳の被災者で、データ欠落のない4万1,432人(男性44.4%)が対象。

 笑いの頻度は、「ほぼ毎日笑う」、「週に1~5回笑う」、「月に1~3回笑う」、「ほとんど笑わない」から選択。「ほぼ毎日笑う」とそれ以外の回答に二分し、生活習慣病の有病率との関係を検討。

 生活習慣病は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脳卒中、心臓病などについて、「診断されたことがあるか」の回答で判定。生活の場所に関する質問に、仮設住宅や避難所と回答した場合は「避難経験者」と判定。他に主観的健康感や心理的ストレス、就労状況、他者との絆などを把握。

 「ほぼ毎日笑う」と回答した割合は、男性23.1%、女性28.6%。ほぼ毎日笑う人は笑いの頻度がそれ以下の人と比較して、男性は、糖尿病〔オッズ比(OR)0.84(95%信頼区間0.75~0.94)〕と心臓病〔OR0.86(同0.75~1.00)〕、女性は、高血圧〔OR0.89(同0.83~0.97)〕と脂質異常症〔OR0.76(同0.69~0.84)〕が有意に低かった。反対に男性では、がんのオッズ比上昇が認められた〔OR1.23(同1.02~1.48)〕。報告者らはこの点については、笑いの効用が広く認知されるようになったため、がん治療中の患者が積極的に笑うように心がけていることの現れではないかと考察。(上図参照)

 避難経験の有無で分けての解析結果は、避難経験がない群では、ほぼ毎日笑う人の有意なオッズ比の低下が認められたのは、女性の高血圧と脂質異常症のみであり、男性では有意性が認められなかった。一方、避難経験のある群では、女性の高血圧、脂質異常症に加えて、男性の高血圧、糖尿病、心臓病についても、ほぼ毎日笑う人ではオッズ比が有意に低かった。

 報告は「東日本大震災後、毎日の笑いの頻度は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病の有病率の低下と関連していた。避難を経験した男性の間で特に強い関連性があり、大災害後などのストレスの多い状況下では、笑いなどのプラス要因が生活習慣病の予防に有効である可能性が示唆された」とまとめている。


「Association between Laughter and Lifestyle Diseases after the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey」
 https://www.mdpi.com/1660-4601/18/23/12699


〔管理者コメント〕

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