若年者層を含めたロコモティブシンドロームに関連する要因調査 -月に数回程度の運動でもロコモのリスクが大幅に低下!-(東京大学医学部附属病院)

 東京大学医学部附属病院企画情報運営部の 山田恵子 氏らの報告。2021年11月19日「BMC Geriatrics」に掲載。

 2017~2019年に全国各地の公的健康診断受診者や健康講義会参加者から募集した20~89歳の一般住民1万444人から要介護認定を受けている人や、疾患などのために移動機能に支障のある人、回答内容に不備のある人などを除き、全国を7ブロックに分け、その人口比に応じて対象者数を調整抽出した8,681人(平均年齢51.6歳、女性58.5%)が解析対象。

 日本整形外科学会の「ロコモ度テスト」に基づき対象全体を、ロコモなし、ロコモ度1~3に分類。ロコモ度1(移動機能の低下が始まっている状態)は31.6%、ロコモ度2(移動機能の低下が進行している状態)は5.8%、ロコモ度3(社会参加に支障をきたしている状態)は3.2%が該当。

 ロコモ度1~3に該当する人は、高齢で身体活動習慣のない人が多く、高血圧や糖尿病などの併存疾患の有病率が高いという点で、ロコモなし群との間に有意差が認められた。

 ロコモの関連因子を検討した結果。(上図参照)
 年齢は、40歳以上では1歳高齢であるごとに、ロコモ度1のオッズ比(OR)が1.05~1.20、ロコモ度2はOR1.04~1.22、ロコモ度3はOR1.05~1.22(いずれも有意であり、高齢層ほどオッズ比が高い)。40歳未満では、ロコモ度1に関しては1歳高齢であるごとにOR1.03~1.04の有意な関連が見られたが、ロコモ度2や3に関しては加齢に伴うオッズ比の上昇は認められなかった。
 女性は、ロコモ度1~3の全てと有意な関連があった(同順にOR2.28、2.40、1.80)。そのほか、過体重、高血圧、糖尿病などに有意な関連。
 運動習慣はロコモのリスクを低下。具体的には、ロコモ度1に対しては月に数回程度の運動でも、ほとんど運動をしない人に比べてOR0.72、ロコモ度3に対しても月に数回の運動でOR0.53、ほぼ毎日の場合はOR0.36で大幅なリスク低下と関連。また、スポーツクラブのメンバーはロコモ度1、3、多様な食品の摂取はロコモ度1、2のリスク低下と関連。

 報告は、「健康的な加齢のためには、すべての世代を対象とした移動能力低下に関する教育が不可欠である」とまとめている。


「Factors associated with mobility decrease leading to disability: a cross-sectional nationwide study in Japan, with results from 8681 adults aged 20-89 years」
 https://bmcgeriatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12877-021-02600-4


〔管理者コメント〕

 垂直方向と水平方向への移動能力を同時に刺激できる身体活動は「階段使用」!!

 ロコモ度1~3については当サイト内で取り上げています。
(サイト内リンク)
「臨床判断値」に「ロコモ度3」を追加(日本整形外科学会)
 https://healthy-life21.com/2020/09/14/20200914/