健康診断の受診者は認知症の発症率リスクが13%低い(千葉大学予防医学センター)

 千葉大学予防医学センター中込敦士氏らの報告。 「Preventive Medicine December 2021」に掲載。

 2010年に実施した日本老年学的評価研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)調査に参加した65-74歳の日本の高齢者のうち、5~6.4年追跡調査を行った31,012名を対象に健診受診が認知症予防に有効かを検討した結果。

 健診受診は2010年時点で過去1年以内に受診したか否か。認知症は介護保険賦課データにある「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクⅡ以上と定義。年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、野菜果物接種、歩行時間、収入、学歴、就労、婚姻状況、ソーシャルサポート、友人と会う頻度、うつ、主観的健康、ADL、治療中の疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中、癌、聴覚障害)の影響をプロペンシティスコアマッチング(PSM:propensity score matching)、逆確率重み付け(IPTW:Inverse probability weighting)を用いて調整して統計学的な評価を実施。

 追跡調査中、1,235人が認知症を発症。5年間での認知症発症リスクは、PSMを用いた解析では健診受診群で3.35%、非受診群で3.81%。健診受診群で約12%低くリスク比0.88(95%信頼区間0.74-1.02)。IPTWを用いた解析では健診受診群で3.15%、非受診群で3.61%で、約13%低くリスク比0.87(95%信頼区間0.76-0.99)(下図参照)。

 報告は、「健診受診者では、認知症発症が少ないことが分かった。健診や特定保健指導により、メタボリック症候群や生活習慣病が予防できれば将来の心血管疾患や認知症のリスクを減らすことが出来るかもしれない」とまとめている。


「General health checks and incident dementia: A six-year follow-up study of community-dwelling olderadults in Japan」
 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091743521003261?via%3Dihub