順天堂大学COIプロジェクト室の沢田秀司氏、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の内藤久士氏、町田修一 師らの研究グループの報告。ロコモ予防のための運動介入研究の結果。血液中のタンパク質の一種である血清アルブミン*1が低負荷レジスタンストレーニングの効果を予測するバイオマーカーになることを明らかにした。2021年8月18日「BMC Geriatrics誌」に掲載。
日本人69名(女性49名、男性20名、平均年齢69.4±6.5歳)が対象。「ロコモ予防運動プログラム」による低負荷の筋力トレーニングを週2回の頻度で12週間実施。トレーニング種目は、スクワット、プッシュアップ、クランチ、ヒップリフト、ヒールレイズ、シーテッドロウ、ランジ、ショルダープレス、アームカールの9種目。2週間ごとに種目数、1セット当たりの実施回数、セット数、セット間休息時間を調整してトレーニングにおける負荷を漸増調整。
運動介入期間の前後には、超音波Bモードを用いた大腿部前面の筋厚測定と血液検査(白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、血色素量(Hb)、ヘマトクリット値(Ht)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素量(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)、血小板数(PLT)、総蛋白(TP)、血清アルブミン(Alb)、AST(GOT) 、ALT(GPT)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、ロイシンアミノペプチノーゼ(LAP)、LD(LDH)、γグルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)、総コレステロール(TC)、HDL-コレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)、LDL-コレステロール(LDL-C)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、空腹時血糖(FBS)の22項目)を実施。運動介入前の血液検査結果に基づき、各項目の下位25%と上位75%の2群に分け、大腿部前面の筋厚におけるトレーニング効果を分析。
結果、運動介入前後の比較にて、被験者全体では大腿部前面筋厚は10.6%増加。トレーニングの効果に影響する因子を分析したところ、血清アルブミンレベル下位25%である「4.1g/dL未満」群と、上位75%である「4.1g/dL以上」群との比較で、血清アルブミンレベルが「4.1g/dL以上」群においてのみ、大腿部前面筋厚の有意な肥大が認められた。(上図参照)
報告は「運動介入前の血清アルブミンレベルに着目すると、低栄養には該当しない状態であっても、4.1g/dL未満と比較的低値である場合には、トレーニングの実施で期待される筋量増加等の効果が適切に得られないことが明らかになった。このことから、血清アルブミンがトレーニングの効果を予測するバイオマーカーになりうる可能性がありる。血清アルブミンを増加させるためには栄養状態の改善が必要であり、特に肉、魚、卵、乳・乳製品、大豆製品といった良質なたんぱく質を摂ることが重要」とまとめている。
※ 血清アルブミン・・・ 血液中のタンパク質の一種であり、血清タンパク質の約50~65%を占める。肝障害、腎不全、ネフローゼ症候群、低栄養状態、妊娠により低下。アルブミンは半減期(血中の濃度が半分に減るまでの期間)が 14~21日と長く、血液検査のアルブミン値は、約3週間前の栄養状態を反映。正常値は4.0g/dl以上で、3.5g/dl以下を「低栄養」とされる。
「血清アルブミンレベルは低負荷レジスタンストレーニングの効果を予測する因子である」(順天堂大学)
https://juntendo-kinkatsu.com/news/news210820/
「Serum albumin levels as a predictive biomarker for low-load resistance training programs’ effects on muscle thickness in the community-dwelling elderly Japanese population: interventional study result」
https://bmcgeriatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12877-021-02403-7