マウスでは「高齢期にむけた健康的な食事のタンパク質比率は25〜35%」(早稲田大学 他)

 早稲田大学の 近藤 嘉高 氏らの研究グループの報告。2023年5月8日早稲田大学ホームページにて公表。研究成果は2023年4月28日に「GeroScience」に掲載。

 若齢(6月齢)と中齢(16月齢)の雄マウスにタンパク質比率(5%、15%、25%、35%、45%)の異なる食餌(カロリーを4.2kcal/gに揃えるため、脂質の比率は日本を想定した25%に固定して、炭水化物の比率を変え、P5群(タンパク質5% 炭水化物70% 脂質25%)、P15群(タンパク質15% 炭水化物60% 脂質25%)、P25群(タンパク質25% 炭水化物50% 脂質25%)、P35群(タンパク質35% 炭水化物40% 脂質25%)、P45群(タンパク質45% 炭水化物30% 脂質25%))の5群を与えて2ヶ月間飼育し、タンパク質比率や月齢が異なると健康にどのような影響があるかを詳しく調査。

 体重は、2ヶ月後、中齢マウスは若齢マウスよりも高値で、P5群は他群よりも低値だった。
 食べた餌の量は、中齢は若齢よりも多く、P5群の摂食量は他群よりも多かったものの、P45群では少なかった。
 P5群では、肝臓に多くの脂肪滴が認められ、中性脂肪と総コレステロールが高値だった。また、中齢のP5群やP15群は、若齢よりも中性脂肪が高値だった。一方、P35群は、若齢、中齢ともに中性脂肪が蓄積しなかった。
 血糖値は、若齢、中齢ともにP25群、P35群が低値だったが、P45群はむしろ高値を示した。P45群は、食餌の炭水化物比率が30%と低いことから、体内でタンパク質のアミノ酸を分解して糖を合成している可能性が考えられる。
 血液中の中性脂肪の値は食餌による違いはなかった。
 総コレステロール値はP15群が最も高値で、P5、P35、P45群では低値だった。
 血液中のアミノ酸濃度(20種類)を測定した結果では、体のなかで作ることができない9種類の必須アミノ酸の血液中濃度は、食餌、月齢、飼料による違いは認められなかった。一方、体のなかで作ることができる11種類の非必須アミノ酸濃度の血液中濃度は、若齢、中齢ともにP5群が最も高値を示し、P45群で最も低値を示した。P5群は、食餌からのタンパク質が不足したため、体のなかで非必須アミノ酸を合成した可能性が考えられる。一方、P45群は、食餌からの炭水化物が不足した結果、体のなかで非必須アミノ酸を分解することにより、エネルギー源として利用した可能性が考えられる。また、血液中の分岐鎖アミノ酸濃度(BCAA)は、P35群とP45群で最も高値を示した。分岐鎖アミノ酸は、筋肉においても重要なアミノ酸で、十分なタンパク質を摂取することは予備力を高めるともいえる。
 マウスの血液中アミノ酸濃度をもちいて、機械学習である自己組織化マップ(SOM:self-organizing map)解析した結果、似たアミノ酸濃度のプロファイルをもつマウスで構成される塊(クラスター)がいくつか形成された。さらに、血液中アミノ酸濃度のプロファイルは、月齢やタンパク質比率の異なる食餌のみで、決定されることもわかった。自己組織化マップに肝臓の中性脂肪量を重ね合わせると肝臓の中性脂肪量が高いクラスター(P5群やP15群、P45群のマウスが多い)や少ないクラスター(P35群のマウスが多い)が認められた。従って、血液中アミノ酸濃度のプロファイルと肝臓の中性脂肪量は良く相関することが明らかになった。
(上図参照)

 報告は、「若齢、中齢ともにタンパク質比率が25〜35%が最も健康的であることが明らかになった。今回はマウスの実験結果であり人に当てはめるのは早計だが、現在の日本におけるタンパク質の摂取比率は13.8%であり、食事のタンパク質比率を25〜35%に高めることは、高齢期にむけた健康維持に役立つ可能性が示唆された」とまとめている。


「健康的な食事のタンパク質比率が判明」(早稲田大学)
 https://www.waseda.jp/top/news/90022
「Moderate protein intake percentage in mice for maintaining metabolic health during approach to old age」(GeroScience)
 https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-023-00797-3