便潜血検査と大腸内視鏡検査の大腸がんのリスクに対する有効性(多目的コホート研究)

 平成2年(1990年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部の4保健所管内(呼称は2019年現在)に在住だった40~59歳で、研究開始時(1990年)、5年後調査(1995年)、10年後調査(2000年)の3回のアンケート全てに回答があり、10年後調査の時点でがん既往がなく追跡可能であった男女30,381人のデータを、平成25年(2013年)まで追跡した調査結果に基づいて、便潜血検査または大腸内視鏡検査の受診回数と大腸がん死亡・罹患リスクとの関連を調べた結果。J Epidemiol 2021年5月web先行公開。

 3回のアンケート調査で、1回でも大腸内視鏡検査を受けたと回答した人は2,407人、残りの集団で1回でも便潜血検査を受けたと回答した人は15,649人、どちらも受けていないと回答した人は12,325人。観察開始から14年間の追跡期間中に、大腸がんで死亡した人は、大腸内視鏡検査群12人(0.5%)、便潜血検査群64人(0.4%)、未受診群104人(0.8%)。大腸がんに罹患した人は、大腸内視鏡検査群46人(1.9%)、便潜血検査群391人、未受診群409人(3.3%)。

 便潜血検査を受けていないグループ(未受診)を基準とした場合の、1回受診したグループ(便潜血検査1回)、2・3回受診したグループ(便潜血検査2回または3回)のその後の死亡・罹患リスクを比較。便潜血検査の回数が多いほど、大腸がんの死亡リスクと罹患リスクが低いことを確認。便潜血検査2回または3回グループは44%減少(HR = 0.56 95%CI、0.33-0.94)。(上図左)
 大腸内視鏡検査を受けていないグループ(未受診)を基準とした場合の、3回(1990年、1995年、2000年)の受診時期における、その後の死亡・罹患リスクを比較。未受診に比べて、2000年に受けた人ではその後の大腸がん死亡リスクが69%低いことを確認(HR = 0.31、95%CI、0.10-0.9996)。一方で、直近の検診が1990年、1995年の人では関連がみられなかった。(上図右)

 報告は「便潜血検査を2回または3回受けた人は、全がん死亡と全死亡リスクが低かった。全がんの罹患リスクとは関連がみられなかったが便潜血検査は大腸がんの死亡リスクを減らすと考えられる。大腸内視鏡検査は2000年に受けた人では大腸がん死亡・罹患のリスクが低下していたが、それ以前に受けた人では大腸がん死亡・罹患のリスクの低下はみられなかった。このことから、大腸内視鏡検査を受けてから10年以上経つとその効果が減少することが推察される」とまとめている。


便潜血検査または大腸内視鏡検査によるスクリーニングの大腸がんリスクに対する有効性について:多目的コホート研究(国立がん研究センター)
 https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8777.html
「Effectiveness of screening using fecal occult blood test and colonoscopy on the risk of colorectal cancer: The Japan Public Health Center-based Prospective Study」
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34053963/