都市部と貧困の度合いが高い地域に住んでいる方は、新型コロナウイルス感染症流行後に出現した自殺念慮の割合が高かった(国立精神・神経医療研究センター)

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP:National Center of Neurology and Psychiatry)トランスレーショナル・メディカルセンター大久保亮室長、ならびに東京大学大学院総合文化研究科池澤聰特任准教授、東北大学大学院環境科学研究科中谷友樹教授・埴淵知哉准教授、大阪国際がん研究センター田淵貴大副部長らの研究グループは、居住地の特性(人口密度の度合い・地域の貧困の度合い・地域の新型コロナウイルス感染者数)と新型コロナウイルス感染症流行下におけるメンタルヘルスの関連を評価するために、2020年9月に全国すべての都道府県から2万8,000人(分析は欠損等を除いた24,819人)が参加する大規模インターネット調査を実施して報告。「Journal of Affective Disorders」オンライン版に掲載された。

 調査期間中のメンタルヘルスの問題の有病率は、COVID-19パンデミック中の重度の心理的苦痛で9.2%、自殺念慮で12.0%、そして新たな自殺念慮で3.6%。

 人口密度が高い地域(都市部)、貧困の度合いが高い地域に住んでいる程メンタルヘルスが悪化している割合が高かった。
 新型コロナウイルス感染症流行後に出現した自殺念慮に関しては、最も人口密度が高い地域(都市部)で1.83倍、貧困の度合いが最も高い地域で1.35倍割合が高かった。(上図参照)
 新型コロナウイルス感染者が多い地域に住んでいることとメンタルヘルスの悪化に関連はなかった。

 報告者は「これらの知見は、新型コロナウイルス感染症流行下において居住地域が心理的苦痛・自殺念慮に与える影響を示した初めての研究です。本研究の結果は、メンタルヘルスの悪化が、新型コロナウイルス感染症患者発生の有無に関わらず全国的な問題であり、特に人口密度が高い地域、貧困の度合いが高い地域であるほど、深刻であることを示しています。人口知能技術や遠隔診療のような広範に届けられる技術を活用し、居住地域によってアクセスが制限されない方法でメンタルヘルスの支援を行うことが、精神疾患罹患・自殺予防には重要であると考えられる」とまとめている。

「新型コロナウイルス感染症流行下で居住地域がメンタルヘルスに与える影響を明らかに:日本全国大規模インターネット調査より」2020年3月26日(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
 https://www.ncnp.go.jp/topics/2021/post_4.html


〔参考〕

 2020年の月別国内自殺者数

(本サイト内)2020年の自殺者数2万919人で増加傾向。新型コロナウイルスの影響か?(厚生労働省)
 https://healthy-life21.com/2021/01/22/20210122/