東京大学大学院農学生命科学研究科の曽我昌史氏らの研究チームが行った東京で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大による緊急事態宣言解除直後に行った自然との触れ合いと、メンタルヘルス状態との関連を調査した結果。詳細は米国生態学会刊行の「Ecological Applications」に11月17日掲載。
対象はオンライン調査会社の登録者3,000人(男性と女性が各1,500人)。期間は6月初旬の3日間。メンタルヘルスの状態は、「自尊心」、「生活満足度」、「主観的幸福感」、「孤独感」、「うつ・不安レベル」の5項目。自然との触れ合いは、5月の1カ月間の緑地の使用頻度・時間、自宅の窓から緑が見えるか否か、および衛星観測による回答者の自宅周辺の植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)を評価指標とし、その他、年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、世帯収入などの質問結果と合わせた計10項目と比較検討。
結果、緑地の利用、および自宅の窓から緑が見えることは、自尊心、生活満足度、主観的幸福感と正の関係性があり、うつ・不安レベル、孤独感とは負の関係性が認められた。また、COVID-19パンデミックによる世帯収入への影響の大きさは、うつ・不安レベルと有意に関連していた(上図参照)。一方、自宅周辺の植生指数は、メンタルヘルス状態と有意な関連が見られなかった。
報告者らは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが続き、人々はストレスの高い状態を強いられている。こうした中、木々の緑に接したり、自宅の窓から緑を眺めることが、メンタルヘルスに好ましい影響を及ぼし得ることが明らかになった」とまとめている。
A room with a green view: the importance of nearby nature for mental health during the COVID‐19 pandemic
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7744839/
〔管理者コメント〕
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大禍の緑の少ない都市部の結果ではあるが、緑がメンタルヘルスに好ましい影響を与えることに疑いはありません。