運動不足は新型コロナウイルス感染時の入院、重症化、死亡リスクを高める

 米・Kaiser Permanente Medical CenterのRobert Sallis氏らが、COVID-19患者約5万例を対象に行った研究結果。Br J Sports Med (2021年4月13日オンライン版)に発表。

 2020年1月1日から2020年10月21日までにCOVID-19と診断された48,440人の成人患者を特定。2018年3月19日から2020年3月18日までに少なくとも3回の運動バイタルサイン測定を実施。1週間の運動時間で0~10分の者を「運動不足群」、11~149分の者を「運動実施群」、米国の身体活動ガイドライン150分/週を満たしている者を「ガイドライン群」に分類。COVID-19診断後の入院、ICU入院、および死亡のリスクに対して関連しているかどうかを評価。

 対象の平均年齢は47.5歳、女性が61.9%、平均BMIは31.2。51.4%は糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心血管疾患、腎疾患、がんなどの併存疾患を有していなかったが、17.4%は1つ、31.3%は2つ以上の併存疾患を有していた。

 「ガイドライン群」は全体の6.4%、「運動不足群」は14.4%だった。ガイドラインが推奨する運動習慣を有する割合は白人が最も多く9.4%、次いでアジア系が7.3%、ヒスパニック系が5.5%、アフリカ系が4.6%。

 COVID-19による入院は8.6%、ICU入室は2.5%、死亡は1.6%。

 運動習慣とCOVID-19診断後の入院、ICU入院、および死亡との関係についてロジスティック回帰分析法で年齢、人種などの因子を調整した結果(下図参照)

・入院リスクは、「ガイドライン群」に比べて「運動実施群」は1.89倍〔オッズ比(OR):1.89、95%信頼区間(CI:1.53~2.33〕、「運動不足群」は2.26倍(OR:2.26、CI:1.81~2.83)。
・ICU入室リスクは、それぞれ1.58倍(OR:1.58、CI:1.10~2.27)、1.73倍(OR:1.73、CI:1.18~2.55)。
・死亡リスクは、それぞれ1.88倍(OR:1.88、Cl:1.02~3.47)、2.49倍(OR:2.49、Cl:1.33~4.67)。

 報告者らは「運動不足は、COVID-19による入院、ICU入室、死亡の危険因子であり、喫煙や肥満、糖尿病、高血圧、心血管疾患、がんなどよりもリスクを大幅に上昇させた。COVID-19重症化やCOVID-19による死亡を予防するには、マスク着用やソーシャルディスタンシング以外に定期的に運動することが重要である」とまとめている。

「Physical inactivity is associated with a higher risk for severe COVID-19 outcomes: a study in 48 440 adult patients」
 https://bjsm.bmj.com/content/early/2021/04/07/bjsports-2021-104080


〔管理者コメント〕

 新型コロナウイルス感染症予防対策の大きな柱は「感染しない。感染拡大を抑える」と「感染しても重症化しない」の2つです。「適度な運動」以外にも「バランスの取れた食事」「十分な睡眠」「よく笑う」「身体を温める」「リラックスできる時間をつくる」などに対する注意が必要です。

(本サイト内)(解説)再掲:新型コロナウイルス感染症禍における健康づくり身体活動のポイント(healthy-life21.com)
 https://healthy-life21.com/2021/01/11/20210111/