(解説)ゼロ次予防と街づくりの紹介(healthy-life21.com)

 医療や保健、公衆衛生の分野では予防を1次予防から3次予防の三段階に分けて考えられている。
  1次予防-健康によい生活習慣により病気を予防
  2次予防-早期発見・早期治療
  3次予防-治療後の再発防止

 これらに対して「ゼロ次予防」とは、「地域や環境そのものが自然に人を健康にする」取り組み。

 ゼロ次予防の3つの柱は、「歩きやすい」(運動)、「人とつながりやすい」(コミュニティ)、「緑が多い」(自然)と考えられている。(上図参照)


〔参考〕

 ニューヨーク市では2010年に「ACTIVE DESIGN GUIDELINES」を制定。知らず知らずのうちに階段を使うように階段は建物のエントランスから見えるように設置することを奨励(下図参照)

 アメリカの都市・建築メディアのCurbedで2018年に「すべての都市がパブリックライフの質を高めるためにできる20のこと」を公開(下表参照)

 建造環境と健康づくりの関係例(下表参照)

 環境が人の行動を変える例(下図参照)


〔管理者コメント〕

 最近「ナッジ※1」をよく耳にするようになったが、「ナッジ」は自然というよりは、損得勘定が垣間見える。個人的には「アフォーダンス※2」のほうがしっくりくる。どちらにしても、あちらこちらで駅周辺などの再開発がみられるが、最低でも10年、20年単位で変えることはできない。少しでも「ゼロ次予防」の考え方を取り入れた街づくりであってほしいと願う。

※1ナッジ(Nudge)
 英語で注意や合図のために人の脇腹をひじでやさしく押したり、軽くつついたりするという意味。人を強制することなく、望ましい行動に誘導するようなシグナルまたは仕組み。行動経済学の権威、アメリカ・シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が2017年のノーベル経済学賞受賞。近年健康づくりにおいても特に健康無関心層に『よい行動』をとらせようとする戦略として大変注目されている

※2アフォーダンス(affordance)
 アフォーダンスとは、環境のさまざまな要素が人間や動物に影響を与え、感情や動作が生まれること。アメリカの認知心理学者ジェームズ・J・ギブソンが、「与える、提供する」という意味の英単語「afford」から作った造語。ギブソンの唱えたアフォーダンスでは、たとえ人間が知覚していなくても、「意味」そのものは存在する。そこにベンチがあれば人間が認識しなくても、「座るものである」という意味が存在するという考え方。
 これに対し、アメリカの認知科学者ドナルド・ノーマンが、1988年に別の概念でアフォーダンスという語を使いはじめた。それは、「アフォーダンスとは、人をある行為へ誘導するためのヒントを示すもの」とする考え方。ベンチの例では、ベンチがあることを人間が認識してはじめて、「座るものである」と認識するということ。ベンチは、人間が座るためのヒントを示しており、疲れていようが元気だろうが、椅子は座ることを誘導している。コンサートなど長時間座った状態の後であっても、休憩ロビーに椅子が並んでいるとつい座ってしまう。