筑波大学体育系 土田 ももこ 氏らの研究グループの報告。2023年11月15日筑波大学のホームページ等で公表。研究成果は2023年11月9日「Journal of Public Health」に掲載。
2016年の日本の1企業の従業員(1万2476人、21~69歳)の健康診査、診療報酬明細書、労働パフォーマンスのデータを用いて、生活習慣(喫煙、運動、食事、飲酒、睡眠に関する11項目)と労働パフォーマンスとの関係を男女別に検討。
生活習慣については、特定健康診査の標準的な質問票のデータから生活習慣11項目(喫煙、運動習慣、身体活動、歩行速度、就寝前の夕食、夕食後の間食、朝食の欠食、食べる速度、飲酒頻度、1日当たりの飲酒量、睡眠による休息)についての回答結果を使用。労働パフォーマンスについては、出勤している労働者の健康問題による労働遂行能力の低下を表す「プレゼンティーズム」の指標である「世界保健機関健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(短縮版)日本語版」(WHO-HPQ)の調査データから、HPQ得点を算出。受療状況については、診療報酬明細書のデータから高血圧、糖尿病、脂質異常症、悪性新生物、筋骨格系疾患、精神疾患、歯科疾患に関して治療・処置・薬剤投与いずれかの有無を基に判定。
男女別に、HPQ得点を目的変数、生活習慣11項目を説明変数(基準カテゴリ:良好な生活習慣)、属性(年齢、職種、役職)および受療状況を調整変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した結果。
男性は、睡眠による休息の不足(β = -0.108)、運動習慣の欠如(β = -0.052)、歩行速度(β = -0.051)、喫煙(β = -0.035)、就寝前の夕食(β = -0.031)、朝食の欠食(β = -0.030)がHPQ得点と関連。女性は、睡眠による休息の不足(β = -0.076)、就寝前の夕食(β = -0.053)、食べる速度(β = -0.032)、運動習慣の欠如(β = -0.028)がHPQ得点と関連。(上図参照)
報告は、「企業従業員の労働パフォーマンス改善に向けた生活習慣改善の取り組みとしては、男女ともに睡眠の改善、運動習慣の定着、適切な時間の夕食摂取に関する健康教育や職場環境の整備等を行うことが重要であり、また性差を踏まえた支援策の検討も望まれる」とまとめている。
「企業従業員の労働パフォーマンス低下には 睡眠による休息の不足が強く関係する」(筑波大学)
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20231115140000.html
「Relationships between lifestyle habits and presenteeism among Japanese employees」(Journal of Public Health)
https://link.springer.com/article/10.1007/s10389-023-02136-4