1日に占める低強度の身体活動の時間が長い高齢者ほど認知機能が高い! - 座位行動や睡眠の時間を見直し、低強度の身体活動を増やすことが効果的である可能性 -(明治安田生命事業財団)

(アイキャッチ画像、上図は本文とは直接は関係ありません)

 公益財団法人 明治安田厚生事業団 兵頭 一樹 氏らの研究グループの報告。2023年02月22日明治安田生命事業財団ホームページにて公表。研究成果は2023年1月25日「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載。

 東京都八王子市の地域在住の60歳以上高齢者で、重度の認知障害がなく、脳卒中または脳卒中などの中枢神経疾患の病歴等がなく医師による運動制限を受けていない76人が対象。

 3軸加速度計センサーを搭載活動量計を用いて身体活動と座位行動の時間を測定。睡眠時間は調査票を用いて自己申告で評価。実行機能は、ストループ課題、Nバック課題、タスクスイッチング課題を行い、抑制機能*1、ワーキングメモリ*2、認知的柔軟性*3を評価。身体活動、睡眠時間と各課題成績の関連性を比較検討。

結果

 1日に占める低強度の身体活動の時間が長いほど、抑制機能を評価するストループ課題の成績が高かった。また、統計学的予測により、座位行動や睡眠時間を1日30分減らして、低強度の身体活動に充てることで抑制機能を評価するストループ課題成績が5-10%程度高くなることが試算された。

 一方、運動やスポーツといった比較的強度が高い活動(中高強度の身体活動)と実行機能の間に、統計的に有意な関連性は確認されなかった。また、ワーキングメモリや認知的柔軟性を評価する課題の成績は、いずれの強度の身体活動とも明確な関連性が確認されなかった。

 報告は、「世界で初めて1日の行動時間の特性を考慮したうえで、高齢者の身体活動と実行機能の関連性を調査した結果。高齢者の抑制機能の維持・向上には、座位行動や睡眠の時間を見直し、低強度の身体活動を増やすことが効果的である可能性を確認。研究成果は、高齢期の実行機能を適切に管理するための、実践・継続しやすいプログラムの開発に寄与すると考えられる」とまとめている。

*1 抑制機能
 ある刺激に対して優位に起こる不適切な反応(行動)を抑制して、適切な反応(行動)をおこなう能力。例えば、横断歩道を渡るときに信号が赤になっていることに気付き、瞬時に止まる場合などに必要な能力。
*2 ワーキングメモリ
 頭の中に情報を一時的に保存しながら情報を処理する能力。会話や暗算などに必要な能力。
*3 認知的柔軟性
 変化する状況の中で、柔軟に思考を切り替えて行動する能力。例えば運転中に交通状況を見て適切に状況判断する際などに必要な能力。


「軽い身体活動が多い高齢者ほど認知機能が高い-座っている時間や睡眠時間を減らして活動時間を増やすと効果的-」(明治安田生命事業財団)
 https://www.my-zaidan.or.jp/pressrelease/detail.php?id=4de6181c40452d2bc0f5c15879278b36&tmp=1677462984
「Association between intensity or accumulating pattern of physical activity and executive function in community-dwelling older adults: a cross-sectional study with compositional data analysis」(Frontiers in Human Neuroscience)
 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2022.1018087/full