国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP:National Center of Neurology and Psychiatry)精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部の栗山健一氏らの報告。2022年1月7日「Scientific Reports」に掲載。
米国睡眠研究(NSRR:National Sleep Research Resource)資料のうち、40歳以降の米国地域住民を対象とし、平均約11年健康状態を追跡した多施設前向きコホート研究(SHHS:Sleep Heart Health Study)のデータを使用。
睡眠心臓健康研究の働き盛り(中年)世代3,128人(平均54.5歳、SD6.6)と高齢世代2,676人(平均73.3歳、SD5.7)の合計5,804人が対象。睡眠ポリグラフで睡眠時間と床上時間を客観的に測定。四分位に分類。四分位範囲(25〜75パーセンタイル)を基準として長短を定義。さらに、睡眠により得られた休養感を5段階で評定し、2/3点をカットオフとして睡眠休養感の有無を定義。睡眠時間や床上時間と健康の関係が睡眠充足度にどのように影響を与えるのかを評価。
結果
働き盛り(中年)世代は、長い睡眠時間は将来の総死亡リスクを減少。短い睡眠時間は将来の総死亡リスクを増加。しかし、床上時間と総死亡リスクの間に有意な関連はなかった。
高齢世代は、長い床上時間は将来の総死亡リスクを増加。しかし、睡眠時間と総死亡リスクの間に有意な関連はなかった。
働き盛り(中年)世代は、睡眠休養感のない短い睡眠時間は総死亡リスクを増加(ハザード比[HR]1.54; 95%信頼区間[CI]1.01–2.33)。逆に、睡眠休養感のある長い睡眠時間は総死亡リスクを減少(HR 0.55; 95%CI 0.32–0.97)。(上図参照)
高齢世代は、睡眠休養感のない長い床上時間は総死亡リスクを増加(HR 1.57; 95%CI 1.23–2.01)。(上図参照)
報告は、「睡眠休養感は簡便に評価可能な睡眠指標。国民の健康を定期的に評価する調査等に採用することで、健康維持・増進を図る有用な指標となる」とまとめている。
※睡眠休養感
夜間の睡眠により休めた主観に基づく睡眠の質指標であり、生理的な睡眠充足度を反映すると推測される。本研究では、一晩の睡眠による休養感を得点化して使用。
「睡眠休養感がカギを握る:健康維持・増進に役立つ新規睡眠指標の開発」(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20220224p.html
「Mortality associated with nonrestorative short sleep or nonrestorative long time-in-bed in middle-aged and older adults」
https://www.nature.com/articles/s41598-021-03997-z