国立研究開発法人国立長寿医療研究センターで研究を進めてきたもの忘れセンター佐治直樹氏が、東北大学、久留米大学、株式会社テクノスルガ・ラボと協力して、日本食の食事パターンと腸内細菌・認知症との関連を研究した結果。2021年10月29日「Nutrition」オンライン版に掲載。
国立長寿医療研究センターもの忘れ外来を受診した85人(61%の女性、平均年齢74.6±7.4歳)が対象。
認知機能検査や食品摂取アンケートなどを実施し、得られた臨床情報と検便サンプルをバイオバンクに収集。(下図左参照)
食品摂取アンケートから日本食スコア(JDI:Japanese diet index)を用いて、「JDI9」(伝統的日本食群:米、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶はプラスポイント、牛肉・豚肉、コーヒーはマイナスポイントの計9品目)、「JDI12」(現代的日本食群:JDI9に大豆・大豆製品、果物、きのこの3品目をプラスポイントで追加の計12品目)および「rJDI12」(「JDI12」のコーヒーをプラスポイントに変更)で算出。
検便サンプルの解析は、T-RFLP法で腸内細菌叢のプロファイルを解析し、液体クロマトグラフィーなどで代謝産物の濃度を測定。
代謝産物と認知機能、日本食スコアとの関連を統計学的に分析。
結果
・ 認知症のない人は認知症の人より日本食スコアが高く、魚介類・きのこ・大豆・コーヒーを多く摂取。(上図中参照)
認知症でない人では、認知症の人より日本食スコアが高値(認知症あり vs. 認知症なし、JDI9: 5 vs. 7, P = 0.049; JDI12: 7 vs. 8, P = 0.017)。
認知症の人と比較して、認知症のない人では、魚介類(65% vs. 39%, P = 0.048)、きのこ(61% vs. 30%, P = 0.015)、大豆・大豆製品(63% vs. 30%, P = 0.013)、コーヒー(71% vs.44%, P = 0.024)を多く摂取。
・ 魚介類・きのこ・大豆・コーヒーの食品摂取が多いと腸内細菌の代謝産物濃度が低い傾向。(上図右参照)
多変量解析では、日本食スコア高値は認知症がないことと強く関連(高値群 vs. 低値群:認知症ありのオッズ比 0.10, 95%信頼区間 0.01-0.45, P = 0.002)。
報告は、「日本食と腸内細菌・認知機能が関連する機序の解明は、認知症の新規予防法の糸口になるかもしれない」とまとめている。
「もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、日本食スコアと認知症、腸内細菌との関連を見出しました」(国⽴⻑寿医療研究センター)
https://www.ncgg.go.jp/hospital/monowasure/news/20211025.html
「Relationship between the Japanese-style diet, gut microbiota, and dementia: a cross-sectional study」
https://doi.org/10.1016/j.nut.2021.111524