少量飲酒でも禁酒により血圧は低下し、逆に飲酒を開始すると血圧は上昇する - 性別や酒類を問わず禁酒の有効性を確認 -(東京科学大学 他)

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(アイキャッチ画像、上図は本文とは直接は関係ありません)

 東京科学大学大学院の 鈴木 隆宏 氏らの研究チームによる報告。2025年10月29日 東京科学大学(Science Tokyo)のホームページで公表。研究成果は、2025年10月22日「Journal of the American College of Cardiology」に掲載。

 2012年10月から2024年3月までの聖路加国際病院附属クリニック予防医療センターの健康診断データベースを使用。58,943人の対象者から得られた359,717回の健診データを分析。飲酒の中止/開始とその後の血圧変化との関連性を検討。

 結果のポイント

・ 断酒および飲酒開始と血圧変化の関連性
 日常的に飲酒していた人が飲酒量を減らすと、用量依存性に血圧が有意に低下。具体的には、1日あたり1~2単位(純アルコール10~20g)の飲酒をしていた女性が完全に断酒した場合、収縮期血圧は0.78mmHg、拡張期血圧は1.14mmHg低下。同様に、男性では収縮期血圧が1.03mmHg、拡張期血圧が1.62mmHg低下し、男女ともに断酒による明確な血圧降下作用が確認された。
 一方、これまで飲酒習慣がなかった人が新たに飲酒を開始すると、飲酒量に比例して血圧が有意に上昇する傾向が認められた。この傾向は男女ともに一貫していた。

・ アルコールの種類による差は認めなかった
 ビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウイスキーなど、アルコールの種類にかかわらず、摂取した純アルコール量に応じて血圧の変動が確認された。このことから、エタノールそのものが血圧を変動させる要因である可能性が示唆された。


 報告は、「現行の飲酒ガイドラインの多くでは、男女で推奨量が異なり、少量の飲酒が許容されている。しかし本研究は、性別を問わず少量の飲酒でも血圧に影響を及ぼす可能性を示しており、今後のガイドライン策定に関する議論に重要な示唆を与えると考えられる」とまとめている。


注)飲酒1杯(1スタンダードドリンク):純アルコール10 gを含む飲酒量の単位。ビール250 mL、ワイン104 mL(グラス約0.9杯)、日本酒84 mL、焼酎50 mL、ウイスキー31 mL(ショット1杯)に相当。


「少量の飲酒でも禁酒で血圧が低下することを実証」(東京科学大学)
 https://www.isct.ac.jp/ja/news/eezakl7r2b5j
「Blood Pressure After Changes in Light-to-Moderate Alcohol Consumption in Women and Men: Longitudinal Japanese Annual Checkup Analysis」(Journal of the American College of Cardiology)
 https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.09.018