筑波大学 市川 政雄 氏らの研究グループの報告。2025年4月15日、筑波大学、東京大学、交通事故総合分析センターのホームページで公表。研究成果は、2025年4月10日「Journal of Safety Research」に掲載。
2014年から2017年までに認知機能検査を受検し運転免許を更新した75歳以上の免許保有者のうち、免許更新から次の更新までの3年間に車両相互事故に遭った運転者の認知機能検査の結果と交通事故のデータを組み合わせ、事故時の運転者を第1当事者(過失の重い方、約10万9千人)と第2当事者(事故時に法令違反がなく過失がなかったと考えられる方、約5万7千人)に分けて、事故時の同乗者の有無を、認知機能検査の結果別(認知症の恐れがある人、認知機能低下の恐れがある人、いずれの恐れもない人の3群)に男女別で比較検討。
結果
男女とも、認知機能検査の結果にかかわらず、第1当事者より第2当事者の方が同乗者を伴うケースが多いことが分かった。その割合は、第1当事者で男性は15~16%、女性は10~11%、第2当事者で男性は29~33%、女性は 26~27%。一方、二者間で事故の発生に寄与しうる要因(年齢、過去の事故経験、事故時の時間帯・天候・場所)に大きな違いは見られなかった。

第1当事者と第2当事者における同乗者有無のオッズ比は、事故の発生に寄与しうる要因の影響を調整したところ、男性では0.36~0.43、女性では0.30~0.32で、高齢運転者は男女ともに認知機能の程度にかかわらず、同乗者を伴っている方が、車両相互事故で第1当事者になりにくい可能性を示唆する結果となった。(上図参照)
報告は、「認知機能検査で認知症や認知機能低下の恐れがあると判定された高齢運転者でも、同乗者がいれば、車両相互事故で第1当事者になりにくい可能性を示唆している。因果関係を示すものではないが、高齢運転者の安全運転に同乗者が重要な役割を果たしているのかもしれない」とまとめている。
「認知機能が低下した高齢運転者は同乗者がいると事故を起こしにくい 」(東京大学)(PDFファイル) https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400262505.pdf
「認知機能が低下した高齢運転者は同乗者がいると事故を起こしにくい」(筑波大学) https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20250415141500.html
「認知機能が低下した⾼齢運転者は同乗者がいると事故を起こしにくい」(交通事故総合分析センター)(PDFファイル) https://www.itarda.or.jp/top/164/show_pdf.pdf
「Association between the presence of passengers and at-fault crash risk among older drivers with and without cognitive decline」(Journal of Safety Research) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S002243752500060X