千葉大学予防医学研究センター 松本 一希 氏、花里 真道 氏らの報告。2025年1月24日千葉大学のホームページで公表。研究成果は、2024年12月9日「Preventive Medicine」に掲載。
日本老年学的評価研究(JAGES:Japan Gerontological Evaluation Study)のデータを用いて、2016年の駅やバス停への近さと、3年後のうつ発症との関連を分析。対象者は、25市町に居住する、2016年時点でうつ症状のない、またはうつ病の治療をしていない日常生活動作が自立している高齢者4,947人(男性2,512人、女性2,435人、年齢65〜93歳、平均年齢73歳)。
うつの診断は、老年期うつ評価尺度(GDS-15:Geriatric Depression Scale-15)を用いて、得点が5点以上を「うつあり」、5点未満を「うつなし」と分類し、3年後のうつ発症の有無を評価。駅やバス停へのアクセスは質問紙で自宅から徒歩圏内(10分〜15分以内)に駅やバス停が「あり」または「なし」に分類と地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を用いて、自宅の代表点(自宅住所エリアの中心点)から駅とバス停までの実際の距離(km)を測定。
結果
対象者4,947人のうち、研究開始から3年後の2019年に「うつあり」となったのは483人(9.8%)。
車を利用しているグループ(4,015人)では、駅やバス停へのアクセスとうつとの関連は見られなかった。一方、車を利用していない高齢者(932人)において、「徒歩圏内に駅やバス停がある」と答えた人(621人)と比較して「ない」と答えた人(194人)は、3年後に1.6倍(オッズ比1.60 95%信頼区間:1.05〜2.42)うつになりやすいことが示された。(上図参照)
報告は、「本研究果は、車を使用できない高齢者が駅やバス停にアクセスしやすくすることで、うつ病を発症するリスクを軽減できる可能性があることを示唆している」とまとめている。
「車を利用しない高齢者は、駅やバス停が徒歩圏内にないと3年後に1.6倍うつになりやすい」(千葉大学)(PDFファイル)
https://www.chiba-u.ac.jp/news/files/pdf/20250123_transportation_1.pdf
「Proximity to public transportation and incidence of depression risk among older adults: A three-year longitudinal analysis from the Japan Gerontological evaluation study」(Preventive Medicine)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091743524003591