メンタルヘルスの増進を「街づくり」から実現 -うつ予防に向けた都市環境デザインへの示唆-(北陸先端科学技術大学院大学 他)

(アイキャッチ画像、上図は本文とは直接は関係ありません)

 北陸先端科学技術大学院大学 Mohammad Javad Koohsari 氏、早稲田大学 岡 浩一朗 氏、石井 香織 氏らの研究グループの報告。2022年12月19日早稲田大学ホームページにて公表。研究成果は2022年12月1日「Landscape and Urban Planning」に掲載。

 日本人中年者を対象としたうつ症状の予防に貢献する「建造環境(built environment)*」の在り方を検討。

 東京都江東区、愛媛県松山市に在住する40~64歳の成人日本人のうち、同意を得た人に、抑うつ症状を調査票(Centre for Epidemiological Studies Depression(CES-D)questionnaire) による調査を実施。建造環境は、客観的指標(人口密度、道路交差点の数、銀行、スーパーマーケット・コンビニエンスストア、レストランなどの生活関連施設の数)と、調査票によって回答を得られた主観的指標(自宅近隣の公共交通機関へのアクセス、犯罪に対する安全性、景観、歩きやすさなどに対する認知)によって評価。最終的にデータの欠落者等を除いた719人(平均年齢52.1歳、59.5%が女性)の結果を分析。

 結果

 自宅近隣の歩きやすさなどの主観的な建造環境への高い認知は、うつ症状の発症リスクの低下と関連していた。
 建造環境の認知とうつ症状の関連は、女性と男性で異なり、女性は、公共交通機関へのアクセスや交通に関した安全性に対する高い認知が、男性は、犯罪に対する安全性の認知の高さが、うつ症状の発症リスクの低下と関連していた。
 近隣の歩きやすさの認知はうつ病にとって重要であった。

 報告は、「本研究の成果は、メンタルヘルスの増進に向けた建造環境を明らかにしていくための今後の研究に対する多くの示唆を含んでおり、世界中の多くの人々がうつ病を含めた精神疾患に苦しんでいる昨今、メンタルヘルスの増進に寄与する『街づくり』デザインの解明が期待される」とまとめている。

* 建造環境(built environment)
 人々の日常生活、仕事、余暇を支える人工的に作り出された都市空間(環境)。その内容は、道路などのインフラ、市街地の広がり方、施設へのアクセス、土地利用の構成など多様。建造環境は、施設配置や土地利用、交通に関する都市計画や街路空間のデザインを通して変化させることができる。


「メンタルヘルスの増進を街づくりから」(早稲田大学ホームページ)
 https://www.waseda.jp/top/news/86520