慶應義塾大学病院 伊東 大介 氏、済生会横浜市東部病院の 伊達 悠岳 氏らからなる研究チームの報告。2024年11月21日 慶應義塾大学のホームページで公表。研究成果は、2024年11月21日「Alzheimer’s Research & Therapy」に掲載。
認知機能正常が47人、軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)が36人、認知症が64人、精神疾患が8人の合計155人の患者が対象。対象者全員に、アミロイド/タウPETと血漿中アルツハイマー病バイオマーカーを測定するとともに、認知症サインHTS(head-turning sign)positive/negative とNeucop-Q(News, Consciousness, and Pleasure simple screening questionnaires for dementia)[3つの質問:認知障害の意識/自己認識(C)正常/障害(normal/impaired)、楽しみ/娯楽(P)normal/impaired、ニュース/時事問題に関する知識(N)normal/impaired]を実施。認知症との関係を検証。
結果
・ HTS positive(pos)、C impaired(imp)とN impの対象者は、アミロイドβ病態を示す血漿バイオマーカー(リン酸化タウ)がそれぞれ43.5%、20.9%、32.1%上昇し、強い関連を示した。
・ アミロイドPET陽性を予測するHTS陽性(HTS pos)の特異度と陽性適中率(PPV:Positive Predictive Value)が最も高い値を示した(アミロイドPET:それぞれ93.0%と87.0%)。
・ 病識なし(C imp)とニュースの記憶なし(N imp)は、アミロイドPETが陽性であることの予測において、最も高い陰性的中率を示しました(75.0%と72.5%)。
・ neucop-qの質問の組み合わせでは、病識なし、楽しみあり、ニュースの記憶なし(C imp/P nor/N imp)の被験者は、血漿バイオマーカーが35.2%上昇し、アミロイドPET陽性を予測する特異度とPPVが最も高値でした(97.2%と83.3%)。
・ 楽しみなし(P imp)は、アルツハイマー病以外の認知症(非アルツハイマー病タウ陽性)の予測に高い特異性を示しました(85.4%)。
・ アミロイドPETによるアミロイドβの蓄積の度合いは、HTS pos、C imp、N imp、C imp/P nor/N impではそれぞれ2.88、1.78、2.36、3.06倍増加していた。神経心理検査を加味するとHTS posとC imp/P nor/N impの方のそれぞれ87%、83.3%がアミロイドPET陽性でレカネマブ※の適応でありました。
HTS pos、C imp、N impを持つ対象者はアルツハイマー病およびアルツハイマー病による軽度認知障害が強く疑われ、P impは非アルツハイマー病認知症における関連を有していた。
報告は、「極めて簡便な診察法、HTSとNeucop-Qは、医療機関のみならず、介護施設、家庭でも可能でありアルツハイマー病の強力な第一選択スクリーニングとして役立つ可能性があることが示された」とまとめている。
※レカネマブ
2023年12月にわが国で上市された認知症治療薬。これまでの薬と違って認知症の原因となる脳内に溜まったアミロイドβを除去することによって症状の進行を直接抑制する効果が期待できる。「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症」が対象。
「簡便な認知症サインと質問セットによるアルツハイマー病のスクリーニング法の確立-レカネマブの適応判断にも利用可能-」(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2024/11/21/28-163335/
「Can the clinical sign “head-turning sign” and simple questions in “Neucop-Q” predict amyloid β pathology?」(Alzheimer’s Research & Therapy)
https://alzres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13195-024-01605-6