対話型コミュニケーションロボットは、孤独感や心理的ウェルビーイングの改善に役立つ!(東京都健康長寿医療センター研究所)
東京都健康長寿医療センター研究所 村山 洋史 氏らの報告。2025年12月8日 同 研究所ホームページにて公表。研究成果は、2025年10月22日に「JMIR Aging」に掲載。

東京都および近郊に在住する者で、i)65歳以上、ii)独居、iii)孤独感が高い(UCLA孤独感尺度3項目版得点が6点以上)の条件に合致した73名が対象。セコム株式会社と株式会社DeNAが運営する対話型コミュニケーションロボット(BOCCO emo)を使用する対話型サービス「あのね」※(現在は新規募集休止中)を4週間無償で提供する「介入群」と、提供しない「対照群」に無作為に割り付け。
主要評価項目は孤独感。副次的評価項目は精神的健康(心理的幸福感、抑うつ、および自己評価による健康)、日常生活における笑いの頻度、健康能力、および対人関係(社会的ネットワークおよび一般的な信頼)。ベースラインおよびフォローアップ時に自記式質問票を用いて評価。さらに、フォローアップ時に、介入群のソーシャルロボットの使用経験について自由記述式の調査を実施。
※「あのね」
対話型コミュニケーションロボット(BOCCO emo)を自宅に設置し、利用者の生活に寄り添った声かけを通して、身内のような距離感でロボットとの会話を楽しんでいただくサービス。「24時間利用できるオペレーターとの対話」「起床・就寝時間、外出時間、内服時間等の日常生活リマインド」「クイズや豆知識などの定期的発信」等を提供。
結果
・ 最終的に前後調査を完了した68名(各群34名)が解析対象。平均年齢は82.3歳(SD 6.5)。64名が女性。対象者1人あたりのロボットとの会話回数は、1日平均5.5回(中央値:4.1、範囲:1-18)。

・ 介入群は、対照群に比べ、4週間後の孤独感(UCLA孤独感尺度で測定)が統計学的に有意に低減(介入群:41.2点→37.4点 [差:-3.7点]、対照群:39.3点→38.9点 [差:-0.4点])。(上図左)
・ 介入群は、対照群に比べ、心理的ウェルビーイング(WHO-5精神的健康状態表で測定)が有意に向上(介入群:14.5点→16.6点 [差:+2.1点]、対照群:14.6点→14.9点 [差:+0.2点])。(上図右)
・ 介入群の質的分析では、 「感情的支えと心理的つながり」、「生活リズムの支援」、「社会的交流の充実」、「認知的・心理的刺激」の4カテゴリーを特定。
報告は、「対話型コミュニケーションロボットは、地域社会で暮らす高齢者の孤独感を軽減することができる。情報通信技術は、地域社会における高齢者の孤独感を軽減し、幸福度を高める効果的なアプローチであると考えられる」とまとめている。
「ロボット介在型コミュニケーションで高齢者の孤独感が改善:無作為比較試験による効果検証と質的分析によるメカニズムの解明」(東京都健康長寿医療センター研究所)
https://www.tmghig.jp/research/release/2025/1208.html
「Evaluating the Effectiveness of Digital Social Robots in Reducing Loneliness Among Community-Dwelling Older Adults in Japan: Randomized Controlled Trial and Qualitative Analysis」
https://aging.jmir.org/2025/1/e74422