どのくらいの聴力から認知症予防として補聴器を始めた方が良いか?(慶應義塾大学)

(アイキャッチ画像、上図は、本文とは直接は関係ありません)

 慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の 西山 崇経 氏らの研究グループの報告。2025年3月7日慶應義塾大学のホームページにて公表。研究成果は、2025年2月24日に「NPJ Aging」に掲載。

 2022年9月から2023年9月までに慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来を受診した55歳以上で、両耳の4周波数(500、1000、2000、3000 Hz)における平均聴力閾値が25 dB HLを超えた難聴者のうち、補聴器の装用経験がないグループ(未装用群)55例と3年以上に渡り補聴器装用を行っているグループ(長期装用群)62例の計117例を対象に、聴力と認知機能の関係について検討。

結果

 聴力閾値と認知機能検査結果は負の相関関係を示し、平均聴力閾値が38.75 dB HLを超えた場合に、認知症のリスクになり得ることを発見。また同時に、3年以上の長期に渡って補聴器を装用している難聴者のグループでは、聴力と認知機能検査における相関関係は消失しており、認知症のリスクになり得る聴力閾値も認めず、補聴器を使うことによって認知症のリスクが緩和されていることを示唆。


 報告は、「本研究により補聴器未装用者において認知症のリスクとなり得る平均聴力閾値が示唆されたと共に、補聴器を長期装用することによって、難聴による認知症のリスクが緩和されることが示唆された。平均聴力閾値38.75 dB HLを超える症例に対して適切な補聴器診療を行うことで、認知症予防に貢献できることを期待している」とまとめている。


「認知症のリスクとなり得る聴力レベルを解明-どのくらいの聴力から認知症予防として補聴器を始めた方が良いか-」(慶應義塾大学)
 https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2025/3/7/28-165503/
「Relationship between hearing thresholds and cognitive function in hearing aid non-users and long-term users post-midlife」(NPJ Aging)
 https://www.nature.com/articles/s41514-025-00203-6