国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの 土井 剛彦 氏らの研究グループの報告。2025 年2月26日 同ホームページにて公表。研究成果は、2025年2月「Journal of the American Medical Directors Association」に掲載。
大規模コホート研究NCGG-SGS(National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromes)のデータを用い、最初の調査時に認知症ではない2,740名(平均年齢74.4歳、女性58.8%)が対象。生活範囲(家から移動できる範囲)にもとづく活動の評価は、Active Mobility Index*(以下「AMI」)を用いて評価。認知症の発症は、医療診療情報と介護保険情報を用いて、活動の評価から何か月後に認知症の発症がみられたかをデータ化して比較検討。追跡期間中(最大5年間、平均53.7カ月)に326人 (11.9%) が認知症を発症。

AMIのスコアの三分位数を元に活動性が「低い群(52点以下)」、「中位の群(53-77点)」、「高い群(78 点以上)」の3グループに分類。活動性が「低い群(52点以下)」を基準にすると、「中位の群(53-77点)」、「高い群(78 点以上)」の認知症発症リスクが低いことが示された。(上図参照)
報告は、「高齢者において日常生活における活動性が高いほど、認知症の発症リスクが低い可能性が示された。認知機能低下や認知症のリスク低減に活動性を高めることはWHO(World Health Organization)のガイドラインなどにおいて推奨されており、本研究はそれを支持する形となった。今後は、生活範囲の拡大や活動の促進を行うためにどのような介入方法が効果的かなどの検証が必要かなどの更なる研究の実施が期待される」とまとめている。
* Active Mobility Index
生活範囲別(戸外~1km、1km~10km、10km以上)に、移動の目的、手段、内容等について評価を行い、それぞれの回答に応じた配点を合計し点数を算出(0~216点)。点数が高いほど活動性が高いことを示す。
「生活範囲別に活動性の高さを評価する質問票(Active Mobility Index)を用いて、大規模な調査・分析を行ったところ、日常生活における活動性が高いほど、認知症の発症リスクが低い事が明らかになった」(国立長寿医療研究センター) https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20240213.html
「Life-Space Activities and Incident Dementia Among Older Adults: Insights From a Cohort Study」(Journal of the American Medical Directors Association) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1525861024008387