ウェルビーイングはスポーツ観戦によって醸成される - 社会科学的アプローチと神経生理学的アプローチの融合研究 -

 シンガポール・ナンヤン工科大学 木下 敬太 氏、早稲田大学スポーツ科学学術院 佐藤 晋太郎 氏らの報告。2024年4月9日早稲田大学のホームページで公表。研究成果は2024年3月22日「Sport Management Review」に掲載。

以下結果のポイント

 スポーツ庁がスポーツへの関心や実施状況の把握を目的として、2万人の日本人を対象に行った大規模調査のデータを分析し、性別、年齢、収入を統制したところ「スタジアムやアリーナでの観戦ならびにテレビ・インターネットでの観戦は、どちらも生活充実感と有意な正の関連がある」ことが示された。

 また、日本人208名を対象にオンラインアンケート形式で測定する実験を行った結果では、人気スポーツと相対的に人気が劣るスポーツの場合には、人気スポーツを観戦すると、よりスポーツ観戦によるウェルビーイングの醸成効果は強くなることが判明。

 さらに、143名を対象にテスラ磁気共鳴機能画像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置を用いて、スポーツを観ている際の脳活動およびスポーツ観戦頻度と脳構造の関係性を調べた結果。「スポーツを観ることで報酬系が活性化し、一時的にウェルビーイングが促進される」だけでなく、「それを繰り返すことで報酬系の構造変化が起こり、長期的なウェルビーイングにも貢献している」という神経生理学的メカニズムが示唆された。

 報告は、「スポーツとウェルビーイングの相性の良さを科学的エビデンスとして提示できたことで、人々がスポーツを通してより充実した人生を送り、幸福に満ちたより良い社会の実現が期待できる結果となった。今後スポーツ振興政策の立案にも影響を与えることが示唆される」とまとめている。


「ウェルビーイングとスポーツ観戦の関係」(早稲田大学)
 https://www.waseda.jp/inst/research/news/77087
「Watching Sport Enhances Well-Being: Evidence from a Multi-Method Approach」(Sport Management Review)
 https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14413523.2024.2329831