過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、ノンアルコール飲料は有用で、減酒のきっかけになる可能性が明らかに!(筑波大学)

 筑波大学医学医療系 吉本 尚 氏らの研究グループによる報告。2023年10月5日筑波大学のホームページで公表。研究成果は2023年10月2日「BMC Medicine」に掲載。

 アルコール依存症の患者、妊娠中や授乳中の⼈、過去に肝臓の病気と⾔われた⼈を除いた20歳以上で、週に4回以上飲酒し、その⽇の飲酒量が男性で純アルコール40g以上、⼥性で同20g以上、ノンアルコール飲料の使⽤が⽉1回以下の参加者を募集。該当した123名(⼥性69名、男性54名)が対象。対象者の年齢分布は22歳から72歳、平均年齢は47.5歳。
 対象者を、ノンアルコール飲料を提供する介⼊群と対照群の2群に無作為に分け、介⼊群には、12週間にわたって、4週間に1回(計3回)、ノンアルコール飲料を無料で提供。両群とも、アルコール飲料の⼊⼿および飲酒に関しては特に制限をすることはなく、⾃由に⽇々を過ごすよう指⽰し、介⼊から20週間の間、毎⽇、アルコール飲料とノンアルコール飲料の摂取量を記録。

結果

 介⼊群と対照群の、介⼊前4週間の飲酒量と⽐べた時の飲酒量の変化をみると、ノンアルコール飲料を提供した4、8、12週時点だけでなく、提供が終わった16、20週⽬も、介⼊群では有意に飲酒量が低下。具体的には、第12週時点で介⼊群-320.8g/4週、対照群-76.9g/4週。第20週時点(介⼊終了から8週間後)においても介⼊群では-276.9g/4週、対照群は126.1g/4週で有意な低値を⽰した。(上図左)
 試験期間を通じて、介⼊群は対照群よりもノンアルコール飲料摂取量が有意に多かったが、提供終了後は徐々にノンアルコール飲料摂取量は減少。(上図右)
 12週⽬のノンアルコール飲料摂取量と飲酒量の介⼊前からの変化量の関係は、介⼊群にのみ有意な負の相関関係が認められたことから、介⼊群ではアルコール飲料がノンアルコール飲料に置き換えられて摂取された可能性が考えられた。

 報告は、「過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、ノンアルコール飲料が有用であり、ノンアルコール飲料が減酒のきっかけになる可能性が明らかになった。アルコール摂取を減らすための有効性が科学的に検証された方法が明らかになることで、過剰なアルコール摂取をしている個人への介入、政策立案などを通した社会貢献につながると期待される」とまとめている。


「ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証」(筑波大学)
 https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20231005140000.html
「Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study」(BMC Medicine)
 https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-023-03085-1