女性の脂質異常症は体重を減らすだけでは不十分であることを示唆する結果(神戸大学大学院)

 神戸大学大学院医学研究科健康創造推進学分野 田守 義和 氏らの研究グループの報告。2023年2月14日神戸大学ホームページにて公表。研究成果は2023年2月9日「Scientific Reports」に掲載。

 65歳の神戸市民で、国民健康保険加入者の10,852人 (男性 3,576人、女性 7,276人) が対象。代表的な肥満併存疾患であり、動脈硬化症にも密接に関連する糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率を肥満度別に分析。さらに、普通体重者と比較し、肥満度が増加したときの疾患を有するリスク(疾患リスク)を解析。

 各疾患の有病率は、糖尿病が9.7%、高血圧が41.0%、脂質異常症が63.8%。どの疾患も肥満度の上昇と共に有病率が増加。ただ、糖尿病、高血圧に比べて、脂質異常症は普通体重者群でも有病率が60%を越えて高い反面、肥満の進行に伴う有病率の増加は緩やかな傾向。

 男女別で検討した結果。男性は肥満度の上昇にともない、3疾患とも疾患リスクが増加。女性は糖尿病と高血圧のリスクが大きく増加する反面、脂質異常症については軽度増加するに留まり、そのピークも軽度の肥満者群で認められた。(上図参照)

 報告は、「今回の研究で、糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病率を減らすためには、男性は減量が有効であること、女性は糖尿病と高血圧を減らすには減量が有効であるものの、脂質異常症には体重を減らすだけでは不十分で、減量以外にも、食事や運動など生活習慣の改善を見据えた指導や診療が必要となることが示唆された」とまとめている。


「肥満では脂質異常症に比べ糖尿病と高血圧のリスクが大きく増加 -女性ではこの傾向がより顕著に -」(神戸大学)
 https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2023_02_14_01.html
「Obesity and risk for its comorbidities diabetes, hypertension, and dyslipidemia in Japanese individuals aged 65 years」(Scientific Reports)
 https://www.nature.com/articles/s41598-023-29276-7