京都大学大学院医学研究科社会疫学の井上浩輔氏らの報告。2021年9月13日「Hypertension」に掲載。
米国のアテローム性動脈硬化症に関する大規模研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)に参加した、高血圧のない48〜87歳の成人412人(平均年齢61.2歳。男女比50%。人種は、ヒスパニック系54%、黒人22%、白人24%)を対象に、ストレスホルモンレベルと、高血圧や心血管イベント(冠動脈バイパス術を要する胸痛や心筋梗塞、脳卒中など)の発生との関連について調べた結果。
対象者は夜間の12時間の蓄尿により、ストレスホルモン(ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、コルチゾール)*レベルを測定。
中央値で6.5年間追跡したところ、4種類のストレスホルモンレベルが2倍になるごとに、高血圧を発症するリスクが21〜31%増加することが判明(調整ハザード比は、ノルエピネフリン1.31、エピネフリン1.21、ドパミン1.28、コルチゾール1.23)。この関連は、60歳未満の人で60歳以上の人に比べて強く、その傾向はドパミンとコルチゾールでより顕著。(上図左)
中央値で11.2年間追跡したところ、コルチゾールレベルが2倍になるごとに心血管イベントの発生リスクが90%増加することが判明(調整ハザード比1.90)。しかし、カテコールアミンと心血管イベントの発生リスクとの間には、関連が認められなかった。(上図右)
報告は、「尿中のストレスホルモン濃度が高いほど、高血圧症の発症リスクが高まることがわかった。また、尿中コルチゾール濃度は、心血管イベントの発生リスクの上昇と関連していた。今回の結果は、高血圧症や心血管疾患の予防および治療において、ストレスホルモンが重要な役割を果たす可能性があることを示している」とまとめている。
* ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、エピネフリン(アドレナリン)、ドーパミンはカテコールアミンと総称され、心拍数や血圧、呼吸を調節する自律神経系に関連。一方、コルチゾールは心身がストレスを感じると分泌が促される。
「Urinary Stress Hormones, Hypertension, and Cardiovascular Events: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis」
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/HYPERTENSIONAHA.121.17618
〔管理者コメント〕
ストレスのコントロールのキーワードは「運動」と「自然」の2つと考えます。
「運動」は、自分自身で質量などをコントロールできるストレスを負荷することにより、回復期に他のストレスも一緒に取り除く。
「自然」は、自然のゆらぎと心身のゆらぎを同調?同期?連動?させることにより自律神経系のバランスを整える。