非アルコール飲料摂取量と循環器疾患発症リスク(多目的コホート研究)

 多目的コホート研究(JPHC Study:Japan Public Health Center-based prospective Study)からの報告。 2021年7月21日「Br J Nutr.」にWeb先行公開。

 岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2019年現在)に在住のうち、循環器疾患やがんの既往がない45~74歳の男女77,407人が対象。

 妥当性の確認された食物摂取頻度調査票(FFQ)から非アルコール飲料(せん茶、番茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、カルシウム飲料、コーラ、甘味飲料などを含む)について、一日当たりの摂取量を算出し、男女別に、人数が均等になるように5つのグループ(男性:367ml未満、367-599ml、600-804ml、805-1,317mlと1,318ml以上、女性:354ml未満、354-599ml、600-782ml、782-1,319mlと1,320ml以上)に分けて、非アルコール飲料の摂取量が最も少ないグループを基準として、その他のグループにおけるその後の脳卒中、虚血性心疾患、全循環器疾患の発症リスクを算出。

 約14年間の追跡調査中に、4,578人が循環器疾患(脳卒中3,751人、 虚血性心疾患827人)を発症。
 非アルコール飲料の種類では、緑茶が約6割とコーヒーが約2割を占めていた。

 非アルコール飲料の摂取量が最も少ないグループに比べ、最も多いグループの脳卒中と全循環器疾患発症のハザード比は、男性でそれぞれ0.82(95%CI:0.71-0.93、Ptrend=0.005)と0.86(0.76-0.97、Ptrend=0.02)、女性でそれぞれ0.73(0.63、0.86、Ptrend=0.003)と0.75(0.65-0.87、Ptrend=0.005)と、高摂取群のほうが脳卒中、全循環器疾患の発症リスクが低いことがわかった(上図参照)。このリスク低下は、非アルコール飲料の摂取量の多かった緑茶の摂取で同様にみられたが、それ以外の各飲料の摂取との関連は認められなかった。
 男女とも非アルコール類飲料摂取と虚血性心疾患の発症リスクとの関連については認められなかった。

 報告は、「非アルコール飲料の摂取量が多いほど、脳卒中と全循環器疾患のリスクは低くなった。体内の水分量が多いことは血圧の低下や血液粘度の低下に関連すること、非アルコール飲料の中でも、摂取量の多かった緑茶に含まれるカテキンなどのポリフェノールが、酸化、炎症、血栓形成及び高血圧に対して予防的に働いた可能性が考えられる」とまとめている。


「非アルコール飲料の摂取と循環器疾患発症との関連について」(多目的コホート研究)
 https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8783.html
「Non-alcoholic beverages intake and risk of CVD among Japanese men and women: the Japan Public Health Center study」
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34284829/


〔管理者コメント〕

 単純に水分摂取は、血液の粘性に影響を及ぼす。5分位の非アルコール飲料摂取の最も多いグループでも男女とも1,400ml弱・・・。積極的に水分摂取を増す取り組みが必要に感じる。