横浜市立大学医学部医学科肝胆膵消化器病学の日暮琢磨氏、中島淳氏、同大大学院医学研究科の葛生健人氏らの研究グループの報告。2021年9月21日に米国医学会雑誌「JAMA Network Open」に掲載。
横浜市立大学附属病院と国立病院機構横浜医療センターの2病院において2017年から2020年までの4年間で新たに消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がん、胆道がん)と診断された全患者5,167人の診断時のStageを調査し、本格的にCOVID-19の流行が始まった2020年3月以降を流行期として流行前の期間と比較検討した結果。
新規がんの診断数は、胃がんは流行期は流行前から26.9%、大腸がんは13.5%と有意に減少。
Stage別に比較すると胃がんのStageⅠは35.5%。大腸がんのStage0は32.9%、StageⅠは34.0%、StageⅡは35.3%と有意な減少が認められた一方、大腸がんのStageⅢは68.4%有意に増加。(上図参照)
その他の膵臓がん、食道がん、肝臓がん、胆道がんに関しては有意な変化は認められなかった。
報告は、「胃がんや大腸がんは早期では症状が出ないことがほとんどで、自粛による受診控えにより早期胃がん、早期大腸がんの診断数が減少した可能性がある。また近年増加傾向にあり、患者数の多い大腸がんに関しては大腸カメラの施行時期の遅れにより進行したstageで発見される例が増加した可能性もある。がんの発生率はCOVID-19前後でも大きな変化はないと考えられるが、診断数が減少していることより、今後も進行がんで発見されるケースが増えるリスクがある。受診、胃カメラ検査、大腸カメラ検査などの検診を延期しないで、がんの早期発見の重要性を呼びかけることが大切」とまとめている。
「COVID-19パンデミックによる受診抑制が消化器がんに及ぼした影響 ~胃がん・大腸がん(特に早期)の診断数が減少し、診断時のStageが進行~」(横浜市立大学)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20210916higurashi.html
「Gastrointestinal Cancer Stage at Diagnosis Before and During the COVID-19 Pandemic in Japan」
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2784394
〔管理者コメント〕
上図は、本サイト内「がん患者の10年相対生存率59.4%(国立がん研究センター)」(https://healthy-life21.com/2021/04/27/20210427_2/)より。
大腸がんの病気別の10年相対生存率を見るといかに早期発見が大切かが伺える。