高齢期の身体活動機能の低下と死亡の関係

 フランス・パリ大学のBenjamin Landre氏らの調査結果。2021年8月4日BMJ誌に掲載。

 英国のWhitehall II研究のデータを使用。主要アウトカムは、2007~19年の期間における全死因死亡と、身体活動機能の客観的指標(「歩行速度」「握力」「椅子からの5回立ち上がり時間」および自己申告による指標(「SF-36の身体的側面のサマリースコア」「基本的/手段的ADLの制限」)との関連。

 解析対象6,194人のうち、ベースライン(2007~09年)から2019年10月の期間に654人が死亡。死亡時の平均年齢は76.8(SD 6.2)歳。死亡した対象者は、追跡終了時に生存していた対象者に比べ、ベースラインの平均年齢が高く(69.7歳 vs.65.1歳)、複数の併存疾患を持つ割合が高く(27.2% vs.12.1%)身体活動機能が劣っていた。

 平均10.6年の追跡期間のベースライン(2007~09年)の身体活動機能の1標準偏差の差(症例/合計、610/5,645)は、死亡リスクが下図、下記のとおり増加。

・ 「歩行速度」で22%(95%信頼区間12%~33%)
・ 「握力」で15%(6%~25%)
・ 「椅子からの5回立ち上がり時間」で14%(7%~23%)
・ 「SF-36の身体的側面のサマリースコア」で17%(8%~26%)
・ 「基本的/手段的ADLの制限」で30%(7%~58%)
 これらの関連性は、2012-13年(平均追跡期間6.8年)および2015-16年(平均追跡期間3.7年)の測定値を用いた場合、徐々に強くなっていった。

 軌跡の解析では、生存者(n=6,194)よりも死亡者(n=484)の方が、死亡前の身体活動機能が劣っていた。死亡者-生存者間の標準化平均差は下記のとおり(以下一部)
・ 死亡10年前の「椅子からの5回立ち上がり時間」(標準化差0.35、95%信頼区間0.12~0.59、男性1.2秒・女性1.3秒の差に相当)
・ 死亡9年前の「歩行速度」(0.21、0.05~0.36、男性5.5cm/秒・女性5.3cm/秒の差に相当)
・ 死亡6年前の「握力」(0.10、0.01~0.20、男性0.9kg・女性0.6kgの差に相当)
・ 死亡7年前の「SF-36の身体的側面のサマリースコア」(0.15、0.05~0.25、男性1.2点・女性1.6点の差に相当)
・ 死亡4年前の「基本的/手段的ADLの制限」(有病率の差2%、0~4%)
 これらの差は、「椅子からの5回立ち上がり時間」、「SF-36の身体的側面のサマリースコア」、「基本的/手段的ADLの制限」について、死亡までの期間に増加。

 報告者は、「結果は、加速する衰退を減らすための取り組みは老年期より前に開始されるべきであることを示唆している。身体活動機能の変化の早期発見は、予防とポイントを絞った介入を可能にする」とまとめている。


「Terminal decline in objective and self-reported measures of motor function before death: 10 year follow-up of Whitehall II cohort study.」
 https://www.bmj.com/content/374/bmj.n1743.long