立ち仕事・歩き仕事の人はCKD(慢性腎臓病)リスクが低い(国立国際医療研究センター)

 国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の山本尚平氏らの研究結果。「Scientific Reports」に2021年6月10日に掲載。

 国立国際医療研究センターが国内十数社の企業と共同で行っている「職域多施設研究(J-ECOHスタディ)」のうち、詳細に身体活動量を評価している電気機械・装置を製造している1社が提供したデータを使用。2006年度に同社で健康診断を受診した20~65歳の労働者のうち、ベースライン時点でCKDに該当する人や解析に必要なデータが欠落している人を除いた1万7,331人(平均年齢42.8±10.0歳、男性15,544人、女性1,787人)が対象。

 身体活動量は、同社で健診用に開発された質問票を用いて評価。余暇の運動は週当たりの身体活動量(METs-時/週)により4段階に分類。仕事中の身体活動は「座位中心」「立位や歩行中心」「より活発」に分類。通勤については往復の歩行時間が「20分未満」「20分以上40分未満」「40分以上」に分類。CKDは、血清クレアチニン値をもとに推算した糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満、あるいは尿タンパクが(1+)以上の場合と定義。2019年3月の追跡終了までに健康診断でCKDが初めて確認された時を発症日とした。

 結果、追跡期間中(中央値10.6年、14万7,752人・年)、4,013人(23%)がCKDを発症。

 仕事中の身体活動が「座位中心」の人と比較すると、「立位や歩行中心」の人のCKD発症ハザード比(HR)は0.88(95%信頼区間0.81~0.96)、「より活発」な人はHR0.89(同0.78~1.02)であった(傾向性P=0.020)。(上図参照)

 余暇時間の身体活動量(傾向性P=0.255)と通勤時の身体活動量(傾向性P=0.139)についてはCKD発症との関連を認めなかった。

 報告者らは「本研究の結果から、座り仕事よりも、立ち仕事や歩き仕事に従事している人の方が腎臓病のリスクが低い可能性があることを確認した」とまとめている。


「Leisure-time, occupational, and commuting physical activity and the risk of chronic kidney disease in a working population」
 https://www.nature.com/articles/s41598-021-91525-4