緩やかな低糖質ダイエット後の体重、血糖異常、脂質異常症等の変化(北里大学)

 北里大学北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏らの報告。2021年6月23日に「Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity : Targets and Therapy」に掲載。

 対象は、交替勤務または長時間の座業のために食事・運動習慣が乱れやすく、メタボリックシンドロームリスクが高くなりがちな東京のタクシー会社の日の丸小津株式会社と、コンビニエンスストアチェーンのローソン株式会社の2社から採用。社内告知を通じてこの研究への参加に関心を示した人のうち、特定保健指導判定基準を満たし、糖尿病や脂質異常症に対する薬剤が処方されていない101人。

 糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)の摂取量を1食20g以上40g以下に制限する「緩やかな低糖質ダイエット」を用いた保健指導を実施。効果的な指導を行うために、1回当たりの介入対象者数を上限30人として、2016年春から2018年秋にかけて計6回保健指導を実施。指導期間は12週間で、60分間のセミナーにより糖尿病やメタボリックシンドローム、緩やかな低糖質ダイエットのエビデンスなどを解説。また、緩やかな低糖質ダイエットに則したメニューのあるレストランの紹介、食品の選択方法などを指導。参加者は介入期間中、毎週メールやファックスで食事摂取状況と体重を指導者に報告し、指導者はアドバイスを返信。また、積極的な運動を奨励。評価項目は、体重やBMI、HbA1c、血清脂質値の変化。一部の参加者では、メタボリックシンドロームとの双方向性の関連が報告されている睡眠時無呼吸症の状況も検討。

 12週間の介入によって、体重は中央値82.5kgから79.7kg、BMIは同27.3kg/m2から26.9kg/m2へと有意に低下(いずれもP<0.001)。また、介入前に睡眠時無呼吸症の見られた39人では、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が同24.1から17.1へと改善(P<0.01)。一方、HbA1c、血清脂質値は有意な変化が見られなかった。しかし解析対象を、介入前にこれらの値が基準値を超えていた人に絞り込むと、全ての指標が有意に改善していた。例えばHbA1cが5.6%以上だった60人では、介入前の中央値6.0%から5.6%に低下していた(P<0.001)。また、中性脂肪150mg/dL以上だった57人では242mg/dLから190mg/dLに、HDL-Cが40mg/dL未満だった31人では35mg/dLから40mg/dLとなっていた(いずれもP<0.01)。さらに、低糖質ダイエットに伴い、時に上昇することのあるLDL-Cについても、120mg/dL以上だった31人の中央値が133mg/dLから120mg/dLに低下していた(P<0.001)。(上図参照)

 報告者らは「本研究には、対照群を置いておらず、また検討対象者は自主的に研究に参加しておりモチベーションの高い集団であったと考えられるといった限界が存在する。この栄養指導法の有効性検証のためには無作為化比較試験が必要と述べている。その上で、緩やかな低糖質ダイエットは、メタボリックシンドロームを予防・改善するための効果的な介入法と示唆される。保健指導担当者や健保団体は、その可能性を認識すべき」とまとめている。


Changes in Body Weight, Dysglycemia, and Dyslipidemia After Moderately Low-Carbohydrate Diet Education (LOCABO Challenge Program) Among Workers in Japan
 https://www.dovepress.com/changes-in-body-weight-dysglycemia-and-dyslipidemia-after-moderately-l-peer-reviewed-fulltext-article-DMSO


〔管理者コメント〕

 現場で指導するものとして報告の結果を否定するものではないが、積極的に運動するようにも介入しており、食習慣改善の効果?運動習慣改善の効果?特に対象者の介入前後の運動習慣の変化が気になる。