体力向上によって改善する学力とは?-苦手科目と得意科目で異なる結果-(神戸大学)

 神戸大学の研究グループの研究結果。2021年4月1日より「NPJ Science of Learning」に掲載。

 469名の中学生を1年生時から3年生時まで2年間追跡し、体力(全身持久力)と苦手科目・得意科目の学業成績(国語・社会・数学・理科・英語の最低評定値と最高評定値)の変化の関係を調査。体力以外の学業成績に影響を与える要因であるBMI、社会経済要因(両親の学歴と世帯収入)、放課後の勉強時間を同時に調査し、それらの影響を統計学的に取り除いて分析。

 結果、中学1年生から中学3年生にかけて体力が向上すると、苦手科目の学業成績が改善(主要5教科の最低評定値が向上)することが示された(上図左)。一方で、体力の変化は得意科目の学業成績(主要5教科の最高評定値)の変化には関わっていなかった(上図右)。この結果から、体力の向上をもたらすような習慣(運動部活動の練習など)は苦手科目の学業成績に好影響を与え、得意科目の学業成績に悪影響を与えないことがわかった。

 報告者らは、「過去15年間にわたる研究によって、子どもの体力と学力の関係が盛んに研究されてきた。しかし、見解は一致しておらず、子どもの体力向上が学力にプラスに作用するのかどうか未だ結論に至っていない状況にある。この一因を解明するため、本研究では科目の違いに注目した。その結果、体力向上が学業成績に与えるプラスの効果は、苦手科目に選択的に認められることが明らかになった。今後は、なぜ苦手科目に対してプラスの効果が選択的に認められたのか。また、このような科目の違いに注目することによって、研究間の矛盾が解消されることが期待される」とまとめている。


「体力向上によって改善する学力とは?」(神戸大学)
 https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2021_04_09_02.html