(一部抜粋)
声明の背景
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的な大流行(パンデミック)の状態であり、すでに全世界の 10 万人以上が死亡したと報告しています。そして、このパンデミックによって多くの人が家の中にとどまることは、身体活動および社会的交流の減少をもたらし、身体的および精神的健康に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。
このような状況にあっても、少しでも身体活動を増やし座位行動を減らすことは、心身の体調を整え、感染を予防する上で重要です。また、長期的には体重の適正化や生活習慣病のリスク軽減に貢献します。さらに、身体活動は、骨の強度や筋量を維持し、筋力を向上させ、バランス能力や柔軟性、持久力を向上させます。このことは、高齢者にとっては、バランス能力を改善し転倒やけがを防ぐのに役立ち、日本運動疫学会は、新型コロナウイルス感染症対策における外出自粛の要請にともなう身体活動不足や座りすぎによる健康被害を防ぐために、「家の中やその周辺において人と人との距離を充分にとって実施する身体活動」を推奨します。子どもたちにとっては、健康的な発育発達を促します。そして、身体活動やスポーツを通して、子どもたちは基本的な運動スキルを発達させると同時に、社会性を身につけることもできます。また、身体活動は、メンタルヘルスを改善し、うつ病や認知機能低下のリスクを軽減することで認知症の発症を遅らせます。
COVID-19 の感染拡大の防止が最優先事項ですが、著しい身体活動不足や長時間の座位行動の危険性に気づかずにいることは、パンデミック後の社会で大きな健康問題になることが予想されます。また、今回の出来事がきっかけとなって、不活動や座りすぎが人々の習慣として定着してしまうことが懸念されます。そこで、日本運動疫学会は、外出自粛期間における身体活動の実践や座りすぎの防止に取り組むことを推奨する声明を発表します。
身体活動や座位行動に関する推奨
以下の推奨は、本声明の発表時点(2020年4月18日)における情報に基づく、健康な人のための推奨です。疾患を持っている人は医師の指示に従ってください。また、今後の感染症状況の変化やCOVID-19に関する新たな知見によって推奨内容が変わる可能性がありますので、行政機関や感染症関連学会から発信されるCOVID-19の予防や管理に関する正確な情報を入手して、それぞれの推奨内容を判断してください。
(1)発熱や咳などの風邪(かぜ)様症状、だるさや息苦しさ、体調不良がある場合は運動を控えて安静にしましょう。
(2)「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(2020年4月16日変更版)」において、屋外での運動や散歩などは生活の維持のために必要なものとされて外出の自粛の対象となっておらず、家の周辺など屋外で運動したり、散歩したりすることに問題はありません。ただし、自らの感染や感染の拡大防止のために、周りの人との距離(2 メートル以上)を保つように注意するとともに、人が集まらない場所で実施しましょう。
(3)屋外で運動する際には、他の人が触れる場所(例えば、公園の遊具など)にできるだけ触らないようにしましょう。ウイルスが付着した手で目や鼻、口などを触ることが感染の原因となるからです。顔には触らないという意識が大切です。どうしても顔に触れたい場合には、手を洗ってから触れることが原則です。また、帰宅したらすぐに手を洗う、あるいはアルコールによる手指の消毒を行いましょう。
(4)家の中で、階段を上り降りしたり、居間や庭で柔軟運動したりするだけでも身体活動を増やすことができます。また、家の中で身体活動を促進するゲーム、テレビ番組、ラジオ放送、インターネットの動画を利用するなど様々な工夫をしてみましょう。その際、30分に一回以上、数分間程度、窓を全開しましょう。複数の窓がある場合は二方向の壁の窓を開放し、窓が一つしかない場合はドアを開けることを心がけましょう。
(5)家の中で運動する場合は、少ない人数で、間隔を2メートル以上離し、十分に換気した状態で行いましょう。特に、激しい呼気や大きな発声を伴う運動は感染のリスクとなることが指摘されていることから、そのような運動を行う場合は1人で行うか、他の人との間隔をさらに空けて行いましょう。
(6)長時間の座位行動(座りすぎ)をできるだけ減らし、できれば30分ごとに3分程度、少なくとも1時間に5分程度は、立ち上がって体を動かすようにしましょう。
「新型コロナウイルス感染症流行下の身体活動不足・座りすぎ対策」(日本運動疫学会)(PDFファイル)
http://jaee.umin.jp/doc/covid19.pdf
〔管理者コメント〕
2021年4月25日に3回目の緊急事態宣言が発令されましたが、上記(2)のとおり屋外での運動や散歩などは生活の維持のために必要なものとされて外出の自粛の対象となっておらず、家の周辺など屋外で運動したり、散歩したりすることに問題はありません。感染症対策をしっかり行ったうえで、外出頻度や外出時間が減ることのないように取り組み身体活動の質量の低下を防ぎましょう。
(本サイト内)(解説)再掲:新型コロナウイルス感染症禍における健康づくり身体活動のポイント(healthy-life21.com)
https://healthy-life21.com/2021/01/11/20210111/