中年期の魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸*の摂取量が15年後の認知症のリスク低下と関連がある!多目的コホート研究(JPHC Study)

 平成2年(1990年)に長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村(1990年時点)に在住の40~59歳の約1万2千人のうち、1995年と2000年のアンケートに回答し、かつ、平成26-27年(2014-15年)に行った「こころの検診」に参加した1,127人のデータにもとづいて、魚介類、また魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量とその後の軽度認知障害・認知症との関連を調べた結果。J Alzheimers Dis. 2020年12月Web先行公開。

 1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケート結果から魚介類とn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量の平均値を計算。魚介類には、さけ・ます、かつお・まぐろ、まぐろ缶詰、たら・かれい、あじ・いわし、たい類、さんま・さば、しらすぼし、うなぎ、たらこ・すじこ(魚卵)、いか、たこ、えび、あさり・しじみ、たにしといった貝類、ちくわ、かまぼの加工食品、干物、塩たら・塩ほっけ・塩さけの19質問項目を使用。
 対象者を、魚介類、n-3系多価不飽和脂肪酸のそれぞれの摂取量で4つのグループに分けて約15年後の軽度認知障害、および、認知症のリスクとの関連を調査。

 結果、研究参加者1,127人のうち、380人が軽度認知障害、54人が認知症と診断。認知症については、魚介類の摂取量が多いほどリスクの低下がみられ、最も摂取量が少ないグループ(中央値56g/日)を基準とした場合、最も多いグループ(中央値82g/日)では61%の認知症リスクの低下がみられた。魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)についても、同様の関連がみられ、最も少ないグループを基準とした場合、最も多いグループでは、それぞれ72%、56%、58%のリスク低下がみられた(上図参照)

 報告者は、「今回の研究では中年期の魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が15年後の認知症のリスク低下と関連があることが示された。一方、魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸摂取量と軽度認知障害との関連はみられなかった。本研究では、認知機能評価を1度しか行っていないこと、食事の変化を評価していないこと、該当地域の一部(14%)の対象者しか調査に参加していないため、一般集団では異なる可能性があるため、さらなる研究が必要。併せて、目安量については、今回の結果では、最も多く魚介類を摂取するグループの摂取量の中央値は82g/日だった。アンケートで尋ねている、魚一切れの重量は、魚の種類や大きさにもよるが70g程度なので、毎日魚を約1切れ以上食べているグループと推計される」とまとめている。

「魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸摂取と軽度認知障害・認知症との関連」:多目的コホート研究(JPHC Study)
 https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8650.html


〔管理者コメント〕

 1日主菜5つ(SV)*として、魚を2つ(SV)、大豆製品を1つ(SV)、肉類は多く摂れても2つ(SV)。ハンバーグ3分の2程度か・・・。

*「つ(SV)」については、農林水産省他のホームページをご覧ください。
 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/division.html


〔参考〕

脂肪酸
 脂肪酸は、構造的に二重結合をもたない「飽和脂肪酸」と、二重結合をもつ「不飽和脂肪酸」に大別される。さらに不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられる。多価不飽和脂肪酸はn-3系と、二重結合の位置が異なるn-6系多価不飽和脂肪酸がある。飽和脂肪酸はバターのような動物性の脂肪に多く含まれている。n-3系多価不飽和脂肪酸にはエイコサペンタエン酸(EPA) 、ドコサペンタエン酸(DPA) 、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸などの脂肪酸があり、魚介類や海棲類に多く含まれる。n-6系多価不飽和脂肪酸にはリノール酸、アラキドン酸などの脂肪酸があり、植物油や動物性脂肪に多く含まれている。