奈良女子大学生活環境学部食物栄養学科特任教授の早渕仁美氏らの報告。Hypertens Res(2020年1月29日オンライン版)に掲載。
低濃度の食塩水の味にうま味が及ぼす影響を調査した結果。
対象は、食塩摂取量が異なる13都道府県(19施設)在住の20~80歳の男女651人。0.3%、0.6%、0.9%の濃度の食塩水と、それぞれの食塩水にうま味物質(0.3%グルタミン酸ナトリウム)を添加した6種類の試験溶液で、ランダム化(くじ引き法)盲検法(思い込みなどを除去する手法)による官能評価を実施。官能評価はVAS(Visual Analogue Scale)法により「塩味の強さ」と「おいしさ」を評価。溶液の順番を入れ替えて1人2回実施し、解析には584人の各2回の平均値を用いた。
結果、食塩濃度が高いほど塩味が強いと感じ、塩味の強さは食塩濃度と相関していた。うま味を添加すると塩味の増強効果が生じ、塩味増強効果は食塩0.3%で特に強く、0.6%ではやや感じられるものの、0.9%ではむしろ若干弱くなる傾向が見られた(上図左)。おいしさの評価では、食塩濃度との一貫した関係は見られなかったが、いずれの食塩濃度でもうま味を添加した試験溶液の方が評価は高かった。特に、食塩0.3%にうま味を添加した溶液ではスコアは倍増し、0.6%および0.9%にうま味を添加した溶液よりもおいしさの評価が高かった(上図右)。
なお、一般的な汁物(食塩0.9%+うま味添加液)に含まれるナトリウム量を基準(100%)とすると、最も美味しく感じられた食塩0.3%+うま味添加液のナトリウム量はその約40%であった。
これらのことから、報告者は「すまし汁にうま味を加えることにより約40%程度までナトリウム量を下げることのできる可能性を示しており、適度のうま味を活用して健康づくりに役立てて欲しい」とまとめている。
「Validation of preferred salt concentration in soup based on a randomized blinded experiment in multiple regions in Japan?influence of umami (L-glutamate) on saltiness and palatability of low-salt solutions」Hypertens Res 2020.1.29 オンライン版
https://www.nature.com/articles/s41440-020-0397-1