食事調査アンケートの結果を用いて、食物繊維(総食物繊維・水溶性食物繊維・不溶性食物繊維)の摂取量を計算し、等分に5つのグループに分け、その後、平均約17年間の死亡(総死亡・がん死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡・脳血管疾患死亡)との関連を男女別に比較検討。さらに食物繊維の摂取源ごとにも調べ、穀類、豆類、野菜類、果物類由来の食物繊維の摂取量でそれぞれ等分に5つのグループに分け、その後の死亡との関連を調査。分析にあたって、年齢、地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動、糖尿病(または服薬)の有無、降圧薬服薬の有無、健診受診の有無、月経状況(女性のみ)、ホルモン剤の使用(女性のみ) 、コーヒー、緑茶、食塩摂取量を統計学的に調整。
結果、食物繊維摂取量が多いほど男女ともに総死亡リスクが低下。また、死因別に調べると、男女ともに食物繊維摂取量が多いほど循環器疾患死亡のリスクが低下。がん死亡については男性は総食物繊維摂取量が多いほどがん死亡のリスクが低下していたが、女性はその関連を認められなかった。(上図参照)また、食物繊維の摂取源ごとの調査では、豆類、野菜類、果物類からの食物繊維は摂取量が多い人ほど総死亡リスクは低下していたが、穀類からの食物繊維摂取との関連は認められなかった。
報告者は「今回の研究で、日本人においても食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低いことが明らかとなった。食物繊維は、血圧・血中脂質・インスリン抵抗性などに良い効果を及ぼすことが報告されている。一方、欧米の研究では、穀類由来の食物繊維の摂取量が多いと死亡リスクが低いとの報告があるが、今回の結果はは、穀類由来の食物繊維摂取量と死亡リスクとの関連は顕著でなく、豆類や野菜類、果物類由来の食物繊維摂取量は多いほど死亡リスクが低いという傾向がみられた。これは、欧米と比較して日本では穀類の中心が食物繊維含有量の少ない精白米であることが理由として考えられる。日本人の場合、食物繊維の摂取量を増やすために豆類や野菜類、果物類由来の食物繊維摂取量を増やすか、より食物繊維含有量の多い穀類(玄米、シリアル、全粒粉パン等)を増やすのがよい可能性がある」とまとめている。
多目的コホート研究(JPHC Study)
食物繊維摂取量と死亡リスクの関連
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8484.html
※ JPHC Study (Japan Public Health Center-based prospective Study):厚生労働省がん研究班による多目的コホート研究