握力が高いほどうつ病リスクが低い!- ただし、男性40kg、女性27kgまで-

 スペイン サラゴサ大学 Rubén López-Bueno 氏らの報告。2022年12月5日「Cambridge University Press」に掲載。

 欧州諸国とイスラエルに居住する一般住民が参加して行われている、加齢と健康、離職の関連についての調査研究(SHARE :Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)のデータを使用。研究登録時にうつ病の既往のあった人等を除外した11万5,601人(64.3±9.9歳、女性が54.3%、握力34.3±12.1kg)が対象。握力はどちらかの手の最大値。

 79万2,459人年(追跡期間中央値7.3年〈四分位範囲3.9~11.8〉)の追跡で、3万208人(26.1%)が EURO-D 12 のカットオフ値(臨床的に重要なうつ状態と判定する4ポイント)以上となり、うつ病と判定された。

 握力の結果を3分位に分類し、最も低い第1分位群との比較では、第2分位群は24%低リスク(ハザード比 0.76、95%信頼区間 0.71~0.81)、第3分位群は36%低リスク(ハザード比 0.64、95%信頼区間 0.59~0.69)。(上図参照)

 握力を連続変数としてうつ病リスクとの関連を検討した結果では、男性は握力が最大40kgまでうつ病リスクが低下するという有意な関連がみられ、40kg以上ではさらにリスクが低下することはなかった。女性は27kgで同様な関係を確認。

 報告は、「握力は高齢者のうつ病のリスクと関連することを示した。この知見は、高齢者への筋力トレーニングプログラムの提供、および高齢者の潜在的なうつ病リスクをスクリーニングするために握力を使用することを推奨するものである」とまとめている。


「Dose–response association of handgrip strength and risk of depression: a longitudinal study of 115 601 older adults from 24 countries」(Cambridge University Press)
 https://www.cambridge.org/core/journals/the-british-journal-of-psychiatry/article/doseresponse-association-of-handgrip-strength-and-risk-of-depression-a-longitudinal-study-of-115-601-older-adults-from-24-countries/5D9FF0D78CF22036C3F4FF2A593F8F64