順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学 加賀 英義 氏らの報告。2022年9月6日順天堂大学ホームページにてプレスリリース。研究成果は2022年9月2日「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載。
東京都文京区在住高齢者のコホート研究「Bunkyo Health Study」に参加した65~84歳の高齢者1,629名(男性687名、女性942名)が対象。
身長・体重・体組成測定、握力・膝伸展、屈曲筋力などの筋力測定、歩行速度や開眼片脚立ち検査などの身体機能検査、75g経口糖負荷検査による耐糖能評価を実施。耐糖能の診断は、日本糖尿病学会の診断基準に従い、空腹時血糖値<110㎎/dlかつ、糖負荷後2時間血糖値<140㎎/dlかつ、HbA1c<6.5%の被験者を正常耐糖能、空腹時血糖値≧126㎎/dlまたは、糖負荷後2時間血糖値≧200㎎/dlまたは、HbA1c≧6.5%、または経口血糖降下薬を内服中の被験者を2型糖尿病、その他の被験者を前糖尿病と診断。サルコペニアは、AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)2019の基準の握力(男性<28㎏、女性<18㎏)と生体電気インピーダンス法による骨格筋量(男性<7.0㎏/㎡、女性<5.7㎏/㎡)で診断。正常耐糖能群、前糖尿病群、2型糖尿病群の3群に分類し、サルコペニアの有病率を比較検討。
結果、男性では、耐糖能が悪化するにしたがって、サルコペニアの有病率が上昇する一方、女性では2型糖尿病群でのみ、サルコペニアの有病率が増加。2型糖尿病群では正常耐糖能群と比べて、サルコペニアのリスクが男性で約2.6倍、女性で約2.1倍。また、男性でのみ前糖尿病群で、正常耐糖能群と比べて、約2.1倍有意に高まった。さらに、男性、女性とも加齢や低いBMI、高い体脂肪率はサルコペニアの独立したリスクとなっていた。(上図参照)
報告は、「糖尿病患者だけでなく、前糖尿病状態の男性でもサルコペニアの有病率が上がることから、運動や食事などの生活習慣の改善に早期から取り組むことが、糖尿病の予防のみならずサルコペニアの予防の観点からも重要であることが示唆された」とまとめている。
「高齢男性では糖尿病予備群の段階からサルコペニアのリスクが増大」(順天堂大学)
https://www.juntendo.ac.jp/news/20220906-02.html