フランスパリ大学のCéline Ben Hassen氏らの報告。2022年2月2日にBMJ(British Medical Journal)に掲載。
1985~88年に英国のコホート研究「Whitehall Ⅱ study」に参加したロンドンで勤務している35~55歳の公務員1万308人(男性6,895人、女性3,413人)が対象。1985~2019年の間に4~5年ごと(1991~93年、1997~99年、2002~04年、2007~09年、2012~13年、2015~16年)に臨床検査実施。多疾患罹患は、13疾患(冠動脈疾患、脳卒中、心不全、糖尿病、高血圧、がん、慢性腎疾患、COPD、肝疾患、うつ病、精神疾患、パーキンソン病、関節炎/関節リウマチ)のうち2疾患以上を有する場合と定義。認知症は2019年3月31日までの病院および死亡記録で同定。多疾患罹患と認知症の関係について検討。
結果、多疾患罹患の罹患率は55歳時で6.6%(9,937例中655例)、70歳時で31.7%(7,783例中2,464例)。中央値で31.7年の追跡期間中に639例が認知症を発症。
55歳時に慢性疾患に罹患していないまたは1疾患のみの者に対し多疾患罹患者では認知症リスクは2.44倍〔ハザード比(HR)2.44、95%CI 1.82~3.26〕。(上図参照)
70歳までは、多疾患罹患の発症年齢が5歳下がるごとに認知症リスクが18%上昇(HR 1.18、95%CI 1.04~1.34)。慢性疾患を3疾患以上有する重度の多疾患罹患では、多疾患罹患発症年齢の低さが認知症リスクに及ぼす影響はより強かった。
報告は、「多疾患罹患はその後の認知症と関連が見られ、特に発症年齢が中年期の場合はその関係が強かった。多疾患罹患発症年齢が若年化する中、慢性疾患を1つ発症した患者における多疾患罹患の予防が重要である」とまとめている。
「Association between age at onset of multimorbidity and incidence of dementia: 30 year follow-up in Whitehall II prospective cohort study」
https://www.bmj.com/content/376/bmj-2021-068005.long