国立精神・神経医療研究センター 成田 瑞 氏らの報告。2024年5月31日多目的コホート研究(JPHC Study)のホームページにて公表。研究成果は2024年5月23日「Epidemiology and Psychiatric Sciences」に掲載。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、東京都葛飾、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の11保健所管内在住の40~69歳約9万人を2018年まで追跡した調査結果を使用。
1995年および2000年に実施したアンケートにおける家族構成に関する質問の回答結果から、(1)独り暮らしを続けた人、(2)独り暮らしだったが途中でだれかと同居するようになった人、(3)だれかと同居していたが途中で独り暮らしをするようになった人、(4)だれかと同居し続けた人の4つのグループに分け、その後の自殺との関連を調査。また同時に、家族構成と他の死因への影響を明らかにするために、自殺以外の死亡・全死亡との関連も調査。
最終的な分析対象は86,749人。ベースライン時の平均年齢 (標準偏差) は 51.7歳 (7.90)。14年間の追跡期間中に306人が自殺。一人暮らしが続くと、追跡調査終了時に自殺による死亡(リスク差 [RD]: 1.1%、95%信頼区間 [CI]: 0.3~2.5%、リスク比 [RR]: 4.00、95%CI: 1.83~7.41)、非自殺による死亡(RD: 7.8%、95%CI: 5.2~10.5%、RR: 1.56、95%CI: 1.38~1.74)、全死亡率(RD: 8.7%、95%CI: 6.2~11.3%、RR: 1.60、95%CI: 1.42~1.79)リスクが上昇。
累積発生率曲線は、これらの関連性が追跡調査を通じて一貫していることを示した。すべての死亡率タイプにおいて、だれかと同居し続けた人が最も低く、だれかと同居し始めた人や一人暮らしに移行した人は、独り暮らしを続けた人と比べてリスク増加は少ない結果。(上図参照)
報告は、「独り暮らしを続ける人は自殺による死亡だけでなく、自殺以外の死亡や全死亡のリスクも高くなるが、生活環境が変わった人の場合、この影響は弱まった。理由ははっきりとは分からないが継続した社会的孤立や孤独感などの要素が結果に影響を与えた可能性が考えられる。孤独感を感じないようにすることや、独り暮らしをしている人が社会的なつながりを得られるようにする対策などが有効かつ必要と考えられる」とまとめている。
「家族構成と自殺・自殺以外の死亡・全死亡との関連について」(多目的コホート研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/9494.html
「Time-varying living arrangements and suicide death in the general population sample: 14-year causal survival analysis via pooled logistic regression」(Epidemiology and Psychiatric Sciences)
https://www.cambridge.org/core/journals/epidemiology-and-psychiatric-sciences/article/timevarying-living-arrangements-and-suicide-death-in-the-general-population-sample-14year-causal-survival-analysis-via-pooled-logistic-regression/30AEC92F63C74AFCF6D9A4DBF91D35C8